ニュース裏表 伊藤達美 いまや年中行事、立民「内閣不信任案」も 岸田内閣は防衛力増強めぐる負担増で「国民の信」を問うのがスジ 選挙不利でも解散避けて通れず

立憲民主党は16日、内閣不信任案を提出した。提出方針を決めたときには、岸田文雄首相の「今国会の解散なし」発言はされておらず、「提出されれば解散」との観測が強まっていた。それでも、臆することなく決断したのは、泉健太代表の覚悟の表れと見ることもできる。
一方、日本維新の会、国民民主党は、自公連立与党とともに反対に回った。岸田内閣は信任しないが、年中行事のように提出する立民に「反対」だからだという。要するに、内容には賛成だが、提出する人が気に食わないから反対したということか。
筆者は、野党は必ず不信任案に賛成すべきだとは思わない。しかし、反対するなら「不信任に値せず」と言うべきで、「信任しない」と言いつつ、「不信任案に反対」というのは、言葉と態度が一貫していないように思える。
通常国会が終了したことで、いよいよ解散時期に焦点が絞られてきたと言っていいだろう。筆者はかねて今秋が最も可能性が高いと予想してきた。
岸田内閣は今国会、新たな決断を次々と下した。とりわけ防衛力の強化は安保・防衛政策の大転換といえる。それを実現するための財源確保法が成立したものの、肝心の「税」の部分は規定されていない。政府が「来年以降の適切な時期」としている以上、来年度の税制改正方針を議論する前に、「国民の信」を問うことがスジだ。
自民党は「2025年以降のしかるべき時期とする柔軟な判断も可能」との提言を取りまとめた。その前提に立てば、今秋、わざわざ信を問う必要はないという理屈も成り立つかもしれない。しかし、それはあくまで自民の言い分でしかない。野党、とりわけ立民は「負担増なら信を問え」と主張してきた。「解散は望むところ」ではないか。
維新は立民を「たたき潰す」と息まくが、この問題をめぐる両党の論戦にも注目したい。立民は「(一定の強化は認めつつも)防衛力強化は必要ない」との立場だ。「負担増は必要ない」との主張は一応、つじつまが合っている。
しかし、維新は「防衛力強化は必要」との立場。だとすれば、その財源をどう捻出するのか。「身を切る改革で」との主張のようだが、それによってどの程度の財源が確保できるのか示すべきだ。
負担増は不人気な政策だが、財源がなければ、防衛力増強は「絵に描いた餅」に終わる。岸田首相としても、解散は避けて通れないのではないか。当然、選挙は厳しくなる。政権交代もあり得るかもしれない。その時は防衛力増強をあきらめるしかない。それが選挙というものだろう。
いかに国民の理解を得て、政策の実現を図っていくか。今度は岸田首相の覚悟が問われる番だ。 (政治評論家・伊藤達美)