連続強盗事件の“指示役”初めて逮捕も…「ルフィ」は本当に今村磨人容疑者だけなのか?

「ルフィ」を名乗る広域連続強盗犯の指示役の一人は、この男だった──。
14都府県、50件超に上るとみられる広域強盗事件のうち、昨年5月、京都市の時計店が襲われた事件に関与したとして、フィリピンから強制送還された特殊詐欺グループ幹部の今村磨人容疑者(39)が29日、強盗容疑で警視庁に逮捕された。一連の強盗事件で、指示役が逮捕されるのは初めてのこと。
腕時計41本(約6900万円相当)が奪われたこの事件では、実行役2人に加え強奪品処分役7人ら計13人が逮捕され、そのうち12人が闇バイトだった。今村容疑者は匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」を使い、幹部4人が収容されていたフィリピンの入管施設から、ショーケースを壊すハンマーの購入やレンタカーの準備、現場店舗の下見を実行役に指示していた。
事件後、盗品の「運び役」が高級時計の売却金約100万円を3回にわたり、今村容疑者の口座に送金。その直後、入管施設周辺のATMから、今村容疑者名義のカードでほぼ同額が引き出されていた。
ルフィグループは「キム」や「ミツハシ」など複数の「コードネーム」と15台のスマホやタブレット端末を使い分け、指示役が誰か特定できないようにしていた。データは消去され、SIMカードは抜かれ、「ルフィ」を名乗る人物が複数いたことから、特定は困難とみられていた。
「幹部4人のうち、京都の事件に関わっていたのは今村だけです。送金記録に加え。実行犯たちの聴取、スマホの解析により、今村から指示があったと特定した。他の事件については、幹部3人も関わっているとみている」(捜査事情通)
グループをよく知る元「かけ子」がこう言う。
「今村は名前の『キヨト』の『K』から取ったかけ子グループ『K箱』のリーダーでした。特殊詐欺をしていた頃からダマし取った金を独り占めするため、単独で受け子に指示を出すことがあった。ただ、しょせんはひとつの箱のトップで、4人の中では一番下っ端扱いでした。気が弱く、力もなく、根性もなかったため、グループ内で『アイツは使えねえ』と言われていました」
■ ボスと下っ端がなすり付け合い
強制送還直前の今年2月、テレビ朝日が今村容疑者とグループのボス、渡辺優樹被告(39)が収容所内で話し合う様子を撮影した動画を放送。渡辺被告から「ルフィでもないよって、オレは本当に言いたいのよ、マジで本当に」と水を向けられた今村容疑者は「だけど、オレがルフィだって言うのはやめてよ、このフィリピン内でも」と、ムキになって反論。今村容疑者は事件への関与が明らかになった後、知人に電話し、「日本に帰って死刑になるのが怖い。震えて眠れない」と漏らしたと、北海道新聞に報じられた。
今年1月、東京・狛江市の住宅で90歳の女性が殺害される強盗殺人事件が発生し、指示役「ルフィ」の存在が明らかになった。指示役も強盗殺人を教唆したとして強盗殺人罪もしくは強盗致死罪に問われれば、死刑または無期懲役になる。今村容疑者と渡辺被告はお互いに「ルフィ」をなすりつけ合ったのだろう。