「復縁を迫るために脅そうと思った」。横浜市鶴見区のマンション敷地内で、大学1年の冨永紗菜さん(18)が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された元交際相手はこうした趣旨の供述をしているとされる。事件は6日で発生から1週間。これまでの神奈川県警の捜査で、容疑者の事件直前の行動や2人のやり取りなどが次第に明らかになってきた。
合鍵で侵入も退出させられ、外出待ったか
事件が起きたのは6月29日午前10時15分ごろ。逮捕された元交際相手の自称会社員、伊藤龍稀容疑者(23)=横浜市鶴見区本町通3=が、大学に行くために敷地内の駐車場に出てきた冨永さんを、包丁で複数回刺した疑いが持たれている。死因は出血性ショックだった。
捜査関係者によると、伊藤容疑者はこの日朝、冨永さんが家族と暮らすマンションを訪れた。自宅から持参した包丁を忍ばせていたとみられている。「よりを戻したかった」。容疑者はこうした趣旨の供述をしているとされる。合鍵を使って部屋に侵入したが、冨永さんの母親に見つかり、合鍵を取り上げられ、退出させられた。
話し合いが不調で不満か
その後、伊藤容疑者と冨永さんは部屋の外で話し合いの場を持った。伊藤容疑者が復縁を迫ったとみられ、県警の調べに「説得できなかった」と供述しているという。冨永さんは話し合いの後、一度部屋に戻り、大学に向かおうと父親が運転する車に乗るため、マンションの駐車場に出た。事件が起きたのはこの直後だった。伊藤容疑者は駐車場近くで冨永さんの外出を待って刺したとみられている。
交際巡り、過去に4回警官が駆けつける
関係者によると、2人は以前同じ飲食店で働いていた。県警によると、2021年10月から今年6月22日にかけて、冨永さんが伊藤容疑者から暴力を振るわれるなどのトラブルがあり、計4回警察官が駆けつけていた。冨永さんが「(伊藤容疑者から)『別れたら殺す』と言われ首を絞められた」と説明したことがあったほか、男女が言い争う声を聞いていた伊藤容疑者宅の近隣住民もいたという。冨永さんの友人は取材に「冨永さんが『けんかすると殴られ、束縛もひどい』と話していた」と証言する。
県警はその都度、口頭で注意したり、双方の家族に様子を見るよう依頼したりしていたが、事件は防げなかった。冨永さんの遺族によると、事件の1週間前に交際は解消したが、その後も伊藤容疑者からの連絡は続いていたという。【牧野大輔、宮本麻由】