北海道蘭越町の山林で蒸気が噴き出し、高濃度のヒ素が検出された問題で、
掘削をしていた会社の社長が、さきほど鈴木知事を訪れて謝罪しました。
蒸気を抑える対策は早くても来月下旬までかかる見通しで、地元のコメ農家からは風評被害への不安の声が上がっています。
(三井石油開発 原田英典社長)「ご心配とご迷惑をおかけして申し訳ございません」
先ほど鈴木知事のもとを訪れた三井石油開発の原田社長。
蘭越町で行っていた掘削工事で水蒸気が噴き出し、高濃度のヒ素が検出された問題で謝罪しました。
(青柳記者)「発生から10日以上が経ちました。山にはモヤがかかっていますが、街中からも蒸気が立ち上っているのがはっきりと見えます」
先月29日から町内の山林で噴き出している大量の蒸気。
地熱発電の調査のための掘削中に噴出し、敷地内の水からは飲料水の基準の2100倍もの「ヒ素」が検出されました。
この水は敷地の外に放出され続けています。
町内のコメ農家・脇山良明さんです。
夏場は稲の生育にとって大切な時期だといいます。
(コメ農家 脇山良明さん)「この中に穂が入っている。お米の赤ちゃんの状態なんです」
ブランド米として知られている「らんこし米」。
ミネラルたっぷりの川の水で育ったコメは、強い甘みが特徴です。
いまのところ、使っている水にヒ素の影響はありませんが、懸念は風評被害です。
(コメ農家 脇山良明さん)「蘭越町という名前が出てしまった以上、小売りで買っているお客さんから心配の声で毎日『大丈夫ですか』って電話やメール、FAXが届く状況が続いています」
きのう開かれた2回目の住民説明会。
蒸気を抑える装置をあらかじめ取り付けていなかったことを明らかにしました。
蒸気は深さ200メートルほどを掘削中に噴出しましたが、この装置については深さ700メートルから設置する計画だったといいます。
(三井石油開発の担当者)「地下の状況が分からない中で、この深度から噴出制御装置をつけていなかったのは、我々の検討が不十分だった可能性もある」
会社側は影響の出た農家などには補償する考えを示しています。
しかし、適用する基準ははっきりとは示されていません。
(参加した住民)「1年ぽっきりの風評被害ではおさまらない。何年もかかると思う」
(コメ農家 脇山良明さん)「謝るとかどうでもいい。俺たちは一生ここで暮らして仕事をしていくのに、どこまで接していくのか。そういう話もないから不安でしかない」
敷地内にあるヒ素を含む水は周辺の井戸に移動させますが、作業はあと10日ほどかかる予定です。
同時に鉄のふたで水蒸気をおさえる工事を進め、最短で8月末までに蒸気の噴出をとめて、その後、坑道は廃坑にするということです。
(コメ農家 脇山良明さん)「ありきたりな会社としての対応じゃないかな。きちんと監督省庁が機能していれば防げたのではないか」
蒸気の発生からまもなく2週間。
農作物への影響はもちろん、風評被害を出さないための対応と対策が求められています。