沖縄県の玉城デニー知事は13日の定例記者会見の冒頭で、同県出身のタレント、ryuchell(りゅうちぇる)さん(27)が亡くなったことに「対談や表敬(訪問)の機会などを通じて何度もお会いする機会があり、沖縄やご家族への深い愛情やご自身の生き方についても、私の人生と重ねて共感するところがたくさんあった」と悼んだ。
ryuchellさんは県の「世界自然遺産大使」を務めた他、県が日本復帰50年に合わせて2022年9月に主催したシンポジウムに玉城知事らとともに参加するなどし、米軍基地や多様性の問題について積極的に発言してきた。玉城知事は記者会見の冒頭で自ら訃報に触れ、「若者の視点から沖縄の現状や課題について発言されるなど、県の施策や事業の推進にも温かい協力をいただいた」と述べた。
ryuchellさんは同県宜野湾市の出身で、米軍基地の近くで生まれ育った。玉城知事は、ryuchellさんが基地問題について「自分の意見を持つことが大切。自分だったらどうするということをまず考えて、みんなで話してみて」と語っていたと紹介。「いろいろなことについて一緒に話し合い、理解しながらいい方向に持っていこうという気持ちがとても広くて深い方だった。私が27歳の時に同じ発言ができていたかと振り返ると、そこまで考え方を深めることはなかった。ryuchellさんの存在と発言で、ほっとした方、助けられた方、共感された方は大勢いらっしゃったと思う」と述べ、急逝を惜しんだ。
ryuchellさんはSNS(ネット交流サービス)などを通じて、生きづらさを訴えるファンやフォロワーからの相談に答える一方、自身も激しい中傷にさらされていた。玉城知事はこうした経緯を踏まえ、「現代社会ではSNSの環境の中で辛辣(しんらつ)な表現が横行する。それが誰かの生き方を左右させたり、自死を招くようなものであっては絶対にならない。発した言葉が誰かに対し、槍(やり)となって刺さってしまうことがないよう心がけたいと思うし、心がけてほしいと強く願う」と強調した。【比嘉洋】