《令和3年に発生した京王線無差別刺傷事件を巡る服部恭太被告(26)の裁判員裁判。東京地裁立川支部で行われている被告人質問は、約25分間の休憩をはさんで再開し、裁判所からの質問が始まった。裁判員からの質問は、いずれも動機に関するものだった》
男性裁判員「死のうと思っていたとのことですが、(別れた)彼女への恨みや、困らせてやろうという思いはありましたか」
被告「一切ありませんでした」
別の男性裁判員「『(被告にナイフで刺され、重傷を負った)Aさんが動いていて、失敗したと思った』と言っていましたが、失敗したら死刑にはならないとは思いませんでしたか」
被告「あくまで想定通りいかず、失敗したと思っただけで、まだ(放火により)燃えた人はいるんじゃないかと思っていました。死刑になる可能性はあると、逮捕されてからしばらくは思っていました」
《裁判員からの質問が終わると、今度は裁判官の質問に移った。裁判官の問いも、被告の動機の解明に費やされていく》
裁判官「死刑になりたいという思いと、死にたいという思いは両方ありましたか」
被告「死刑になりたいとは思っていましたが、死刑以外(で死ぬのは)は嫌で、火にまかれて死のうとは思いませんでした」
裁判官「何人殺そうとしていましたか」
被告「当日は考えていませんでした」
裁判官「漠然とした人数についてもですか」
被告「はい」
《裁判官は、殺害することを想定していた人数について質問を重ねる。事件を起こしたとしても、死刑判決が出るかは別物。裁判官は、被告が死刑になりたいという思いを果たすため、どの程度の被害規模の事件を起こそうとしていたのかを問いただしていく》
裁判官「死刑になるための人数は考えていましたか」
被告「あくまで2人以上殺したら死刑になるという認識はあったので、漠然とそのくらいは殺そうと思っていました」
裁判官「ハロウィンにしたのはどうしてですか」
《被告は当初、犯行場所をハロウィン期間中の渋谷にしようとしていたが、小田急線の刺傷事件に影響され、京王線の車内に変更したとされる。裁判官の質問は、こうした計画の変更を念頭に置いたものだ》
被告「たくさん殺すには密集している方がいいだろうと考え、密集しているものとして、パッと渋谷のハロウィンが思いつきました」
《質問は一転し、被告が18歳のころに自殺未遂を起こした経緯に移る。午前中の被告人質問で被告は、弁護人に対し、勤務先でのストレスから自殺を図ったことを明かしていた。中学時代の後輩の女性と交際していたころだ》
裁判官「自殺未遂をして病院で目が覚めましたが、家族は心配していましたか」
被告「病院には母が駆け付けたが、心配している様子はありませんでした。彼女は付き添ってくれて、心配してくれました」
裁判官「死にたいという思いへの変化はありましたか」
被告「数カ月、精神科のクリニックに行きましたが、あまり変わりませんでした。彼女が来たから劇的に変わるということは、ありませんでした」
《別の裁判官の質問を挟み、裁判長が改めて、被告が火をつけようとした前後の状況について、詳しく聞き始める。被告がオイルをまき、火をつけたライターを投げ込んだ行為が殺人未遂罪にあたるか。今回の公判の争点の判断には、殺意の有無の解明が不可欠だ》
裁判長「(車両の)連結部分で動けなくなっている人が何人以上いたら、火をつけようという考えはありましたか」
被告「なかったです。自分は10人以上いると認識したので、(死刑判決が出るのに必要だと考えていた被害者数が)2人を上回っていたから火をつけました」
裁判長「オイルをまいているときに、手にはかかりましたか」
被告「多少はかかったと思います」
裁判長「(オイルの入っていた)ペットボトルの捨て方は覚えていますか」
被告「ポイっと床に捨てる感じです」
裁判長「火をつけたら、すぐジッポーライターを投げつける予定でしたか」
被告「はい」
《ここで、休憩を挟んで続いていた服部被告に対する被告人質問は終了。続けて、関係者の証人尋問へと移った》