《令和3年に発生した京王線無差別刺傷事件を巡る服部恭太被告(26)の裁判員裁判。東京地裁立川支部で行われている被告人質問では、検察官による質問が続いた。被告が事件前にナイフの切れ味を試すなどの実験を繰り返していたことを問いただした後、検察官は事件当日の状況について質問を進めていく》
検察官「事件当日は、どのような行動を取りましたか」
被告「殺虫スプレーをかければ乗客は先頭車両の方に逃げていくと思いました。人が向かってきたら刺そうと思い、右手にナイフ、左手にスプレーを握りました」
検察官「計画を邪魔する人がいたらナイフで刺そうと思った?」
被告「はい。ただ、オイルで人を焼き殺すことがメインでした」
検察官「それは、死刑になりたかったからですか」
被告「そうです」
《殺虫スプレー、ナイフ、オイルのそれぞれの〝使い道〟を事前に計画していた被告。犯行当日、被告が京王線の車両内でナイフを取り出すと、近くにいた男性が被告の行動に気付き、大きな声を上げた。被告にナイフで刺され、重傷を負うことになるAさんだ》
検察官「Aさんから怒鳴られた?」
被告「そうです。(犯行を)妨害されないよう、Aさんの顔をめがけてスプレーを噴射しました」
検察官「そのとき、Aさんとの距離は?」
被告「(互いの)手がぶつかるほど近くだったと思います」
検察官「手がぶつかってすぐに刺そうと思った?」
被告「そうですね。時間的には分かりませんが」
検察官「それでナイフを突き出した。力加減は?」
被告「力いっぱいです」
検察官「刺した感覚は?」
被告「何か硬いものがぶつかったような感覚でした。刺さったという感覚はありませんでした。『ドン』という感じで、『ブスッ』という柔らかいものの中に入っていくという感覚はなかったです」
《当時の生々しい状況を淡々と明かしていく被告。被告がAさんを刺していたころ、車両内の異変に気付いた乗客は、先頭車両方面に逃げていった。被告は、Aさんが出血している状況やナイフの状態などを確認しないまま、先頭車両方向に乗客を追い立てていった》
検察官「逃げていく人の様子は?」
被告「僕の方をチラチラと見ながら先頭(車両の方)に逃げていました。おびえていると思って、計画通りだと思いました」
検察官「ナイフを上にして(かざして)、お客さんを追いかけてましたね」
被告「(米人気コミック「バットマン」の悪役の)ジョーカーが映画のなかでやっていたので、模倣しました」
《乗客は、5号車と6号車の連結部分に立ち止まっていた。被告はこの後、オイルを乗客にまきちらし、ライターを投げ入れて火をつけたとされる。検察側は一連の行為が乗客に対する殺人未遂罪にあたると主張する一方、弁護側は「殺意がなかった」として争う姿勢を示している》
《検察官は、被告がライターに火をつけた際、被告が左手に着けていた手袋に火が燃え移ったことについて尋ねていく》
被告「手に火がついて驚いて呆然(ぼうぜん)としてしまいました。その時点では熱さを感じていませんでした」
検察官「捜査段階では急いで投げたと供述している。『呆然としてしまった』というのでは、検察官に話したこととは違うのではないですか」
被告「異なる部分はあると思います」
《検察官は、捜査段階での供述と公判での被告の話が食い違っている点を指摘。さらに、事件の動機に関する部分について質問を重ねる》
検察官「『死刑になりたい』『殺してもらいたい』という考えが頭にあったか」
被告「会社でのこと(トラブル)や、彼女とのこと(別れ)が頭にあり、『自殺できないのであれば、他の方法を』と考え、(誰かに)殺してもらうしかないと思いました。でも(誰かに)『殺してください』ということもできない。そう考えた上で死刑になろうと思いました。躊躇(ちゅうちょ)はありました。できれば、やりたくありませんでしたが、死刑になるには事件を起こすしかないと思いました。葛藤はありました」
検察官「しかし、対象となる人は何も悪くない。そう考えなかったのですか」
被告「そのことを考えないようにするため、思いついたのが、ジョーカーというキャラクターでした」
《ここで検察側の質問が終了。続いて、被害者参加制度で出廷した被害者側の弁護士が、質問を始めた》
被害者側弁護士「重複するが、死刑にしてもらおうと思って事件を起こしたということでいいですか」
被告「はい、そうです」
被害者側弁護士「事件前、あなたは日記に『(事件の)当日を楽しみにしている』『人が死ぬ瞬間を見たい』などと書いています」
被告「自己暗示のためにあえて、日記に残しました」=(7)に続く