千葉県内の河川などで、「最強・最悪の侵略的植物」とも呼ばれる南米原産の「ナガエツルノゲイトウ」の繁茂が止まらず、農家らを悩ませている。ちぎれ落ちた茎などからも再生するほど生命力が強く、水門を詰まらせたり、田んぼの稲を倒したりする恐れがある。県は政府に駆除方法の確立や財政支援を求めている。
稲作が盛んな千葉県旭市。水田地帯を流れる秋田川のあちこちにナガエツルノゲイトウが生い茂っている。南米原産の水生植物。茎は長さ50~100センチほどで太さ約4ミリ。マット状に葉を広げていくため、川幅いっぱいに水面が覆われているところもある。
「数年前から正体の知れない草が生えてきた」。近くに水田を持つ男性(69)は「駆除しても切りがない。エンドレスの戦い」と嘆息する。ちぎれた茎などが水田に入り込んで繁茂すれば、コメの収穫量が激減しかねないという。
ナガエツルノゲイトウは外来生物法の「特定外来生物」に指定され、屋外栽培が禁止されている。国立環境研究所のデータベースによると、もともとは観賞用の水草として国内に持ち込まれたが、1989年に兵庫県で初めて定着した。西日本や関東などに分布域が拡大し、昨秋に山梨県で初確認されるなど、昨年末時点で25都府県に広がっている。
生態に詳しい滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹・特別研究員は「水陸両生で暑さや乾燥にも強い。茎が折れやすく、ちぎれた部分から、どんな場所であっても広がってしまう」と説明。刈り取っても地面に放置していたり、根が一部でも残っていれば、その場から再び繁茂するという。
手賀沼(千葉県柏市など)で駆除に取り組む「美しい手賀沼を愛する市民の連合会」の担当者は「手作業では焼け石に水。行政との連携が欠かせない」と話す。
千葉県は民間団体などに補助金を出している。ただ、駆除費用は秋田川周辺だけでも2000万円超との試算があり、県の財源では到底足りない。熊谷俊人知事は5月、関東などの10都県が集う会議で、「効率的な駆除方法を早急に確立し、国の予算を十分に確保することが必要だ」と訴えた。