◆これで民主主義国家と言えるのか ―― 岸田首相は国会の会期末に衆議院を解散するかのような素振りを見せていましたが、結局解散を見送りました。いったい何がしたかったのか、理解に苦しみます。 村上誠一郎氏(以下、村上) 岸田首相は自らの権力基盤を強化するために解散を狙っていたのだと報じられていますが、そうであるとすれば、策に走りすぎです。もし解散するのであれば、「この政策をどうしても実現したいので、衆議院を解散して国民に信を問う」といった大義名分が必要です。 しかし、現状、岸田首相からは「どうしてもこれがやりたいんだ」という政策や信念が見えてきません。突然防衛費を倍増したり、異次元の少子化対策に取り組むと言い始めるなど、実際のところ何がやりたいのかよくわかりません。 国民の間にも岸田政権に対する不信感が広がっていると思います。通常国会閉会後に行われた読売新聞の世論調査では、岸田内閣の支持率は56%から41%に急落しました。解散権を弄びすぎたので、政治家として芯がないと見られてしまったのではないでしょうか。一部では、秋口に解散が行われるのではないかという見方もありますが、いまの状態ではとても無理ではないかと思います。 ―― 本来なら、自民党がもっと強く岸田首相を牽制し、解散権を弄ぶような真似を阻止すべきだったと思います。岸田政権は安倍政権ほど権力基盤がしっかりしていないはずなのに、自民党議員たちは安倍政権時代と同様、岸田官邸に追随しているように見えます。 村上 安倍政権時代より悪化していると思います。安倍政権のころは、まだ面と向かって安倍首相の問題点を指摘する人もいました。しかし、いまはすっかり官邸に隷属してしまっています。防衛費を倍にしたり、敵基地攻撃能力を認めて専守防衛をやめると言っているのに、党内から目立った批判は出ず、まともな議論も行われていません。私が総務会にいたら絶対に反対していますが、役職停止になってしまったので、異論なく通ってしまいました。 また、困ったことに連立与党の公明党も岸田政権に追随しています。公明党は平和と福祉の党だったはずですが、安倍政権時代には集団的自衛権を認め、今回も防衛費の倍増や敵基地攻撃能力を容認してしまいました。もちろん公明党のことは公明党が決めればいいのですが、公明党の支持母体である創価学会の皆さんは内心忸怩たる思いを持っている気がします。