夏休み「トー横」にたむろする若者、聖地化に潜む危険

日本一の歓楽街、東京・歌舞伎町にある「トー横」と呼ばれる地域に集う若者らの姿が絶えない。家庭や学校などで居場所のない未成年者らが、目的もなく身を寄せ合っているとされるが、飲酒や市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)が横行するほか、性犯罪に巻き込まれるケースも少なくない。夏休みを迎え警視庁は取り締まりを強化するが、現地を歩くとその危うさの一端や、「聖地化」が加速する現状が浮かぶ。
「こんばんは。いきなりごめんね、警察です。年齢の分かるもの、見せてもらえる?」
今月15日深夜、私服姿の捜査員らが、歌舞伎町のボウリング場などが入るビルの階段に座っていた女性2人に声をかけた。
「え、なんで」。地雷系と呼ばれる目立つ服に身を包んだ2人は、動揺しつつも、かばんから身分証を取り出して捜査員に示した。
辛うじて未成年ではなかったが、捜査員は「危ないから離れてね」と注意を促すことを忘れなかった。
目的なく集まる
トー横は、映画館などが入る商業施設「新宿東宝ビル」の横という意味だ。ビル周辺や、その西側のテニスコート6面分ほどの約1200平方メートルの広場が、トー横と呼ばれる地域になる。
このトー横に、なぜ若者は集まるのか。
広場や道路には、酒の空き缶やたばこの吸い殻が散乱。地べたに座り込んだり寝そべったりしている若者らの姿も目立つ。「確たる目的がないんですよ」。捜査関係者はこう語る。
数年前くらいから若者が集まるようになったトー横。最近では地方にまで存在が知られ、家庭や学校に居場所を見いだせない若者らが、同じ境遇の「仲間」らを求め、この地を目指す聖地化が加速する実態もあるとされる。
学校が長期休みに入る夏は、より多くの若者が集うとみられる。15日夜~16日朝にかけて13~18歳の26人が補導された。この中には、行方不明届が出されていた少女2人も確認された。宮城から上京していた少女や、市販薬を大量に摂取して前後不覚に陥った少女もいた。
犯罪の危険
こうした若者につけこむ大人の存在も絶えない。
社会的知識が乏しい中学生の少女(14)に相談相手になると近づいてわいせつな行為に及んだ男(38)もいた。少女はオーバードーズを繰り返し男に効き目の強い薬を求めていたという。
トー横近くには、アイドル風の男性従業員が接客するメンズコンセプトカフェやホストクラブも多い。特定の従業員を応援する過剰な「推し」で数百万円を貢ぐため、未成年であることを隠して風俗店で働いたり、援助交際したりする少女も確認されている。誘惑と危険が交じり合ったなかで少女たちは過ごす。
警視庁少年育成課の平沢信行課長は「トー横には危険が多い。犯罪に巻き込まれる可能性があるので、近づかないでほしい。被害から守るため、今後も補導を推進する」と話した。(橘川玲奈)