2019年の参院選の買収事件で、実刑判決を受けた河井克行元法相から現金を受け取った元広島市議の木戸経康被告(67)を取り調べた東京地検特捜部の検事が「買収されたと認めれば不起訴とする」ことを示唆した取り調べの録音データがあることが21日、明らかになった。再び検察不信の引き金となるのか。
司法担当記者が明かす。
「録音データの話は21日の朝刊で読売新聞が一面トップで報じ、その日の午後、元市議の弁護士が地元の広島市で会見して公表しました。公選法違反での適用は認められていない司法取引をしたのと同じで、不起訴という“アメ”を与えて認めさせる『利益誘導による自白の疑い』があり、最高検も関心を持っています」
事件は河井元法相が100人の地元政治家らに計約2900万円の現金を配って買収。候補者だった妻の案里元参院議員も有罪となった。
公判で元市議を含む100人のほとんどが、金は案里氏の選挙のための買収資金だったと証言。本来なら買収された側も起訴されるが、特捜部は100人全員を当初不起訴に。検察審査会の指摘を受け元市議ら34人がようやく起訴された。
「元市議は当初、現金が買収目的だったことを否定していたのを、検事の示唆を受けて翻しました。元市議に限らず、捜査段階から不起訴を実質的に約束して証言を引き出したとの批判は絶えませんでしたが、今回はデータという動かぬ証拠があるのが違う」(同前)
「不起訴を期待するのが自然」衝撃的な検事の発言
《できたら議員を続けていただきたい。そのレールに乗ってもらいたい》
《議員を続けて頂きたいので否認にはしたくない》
録音されていたという検事の発言は衝撃的だ。司法関係者が一連の発言について解説する。
「『認めれば不起訴にする』とストレートに言ってはいないが、ここまで言われれば不起訴を期待するのが自然。自白を引き出すための利益誘導といわれても仕方が無いだろう」
ただ、このデータ、7月27日開始の元市議の公判で披露される予定はない。データは元市議が買収を認めた供述の信用性を失わせる証拠になるが、弁護士によれば、検察側はそもそもこの供述を買収の証拠として使わずに立証する方針に切り替えたため、出す機会が失われたのだという。
公には幻となりそうなデータの存在は検察側も把握しているが、幹部の見解は割れる。実は読売も続報で明かしているが、この検事、元市議が調書に署名した後、「不起訴で終わるとの約束はできない」とも発言。「誘導とまでは言えない」という見方もあるのだ。
最高検は「公判の推移を踏まえつつ適切に対処する」としており、何のお咎めもない可能性も残る。大山鳴動の後の結末やいかに?
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月3日号)