ビッグモーター立ち入り1週間、不正車検の有無も「徹底的に調べる」

中古車販売大手ビッグモーターへの道路運送車両法に基づく国土交通省の一斉立ち入り検査から、4日で1週間となる。国交省は、修理費用を水増しするため本来は不要な整備をした疑いに加えて、「不正車検」など安全を脅かす法令違反がなかったか調べている。
検査を担当した各運輸局には、同社側から提出された修理の記録や写真、従業員から聞き取ったメモなどが山積みになっているという。ある国交省幹部は「顧客の目の届かない工場で不正があったのなら、整備の信用を失墜させる。正しく整備されているかどうかは車の安全に直結するため、徹底的に調べる」と意気込む。
同社は北海道から沖縄まで全国で約260店を展開。店舗に併設する整備工場で車検や板金・塗装をし、道路運送車両法に基づく民間車検場の指定や整備の認証を135カ所で受けている。国交省はこのうち34カ所に、7月28日に一斉に立ち入り検査をした。同26日の和泉伸二社長らへの聞き取り調査から2日後のスピード対応で、これほどの規模の一斉検査は異例なことだ。
同社が公表した外部弁護士による調査報告書によると、損害保険会社への保険金の請求を水増しするため、紙やすりやゴルフボールで顧客の車にわざと傷をつけて修理箇所を広げたほか、不要な板金作業や部品交換をしていたとされる。
道路運送車両法は、顧客の依頼のない整備をして不当な料金を請求する「過剰請求」を禁じている。国交省は報告書にも記載がある過剰請求を念頭に置きつつ、車検で必要な検査の一部を実施せずに車両を不正に合格させる「不正車検」についても調べている。
というのも同社では「不正車検」が今年だけで3件明らかになっているからだ。熊本浜線店(熊本市)と宇都宮南店(宇都宮市)では、車両各58台のスピードメーターの誤差を検査しないまま、基準に適合していたとする「保安基準適合証」を交付した。
国交省は「運転手が正しい速度を把握できない恐れがある」とみて、安全にかかわる重大な違反と認定。両店の民間車検場の指定について、3月と6月に最も重い「取り消し処分」とした。2月には唐津店(佐賀県唐津市)でも、点検整備の一部を実施せず、行政処分を受けている。
この点、兼重宏行前社長は7月25日の記者会見で、「我々もそういうことは絶対にあってはいけないということで監査に入ったりするが、外からでは全く分からない」と述べていた。
国交省はこうした過去の違反も参考にしながら、整備記録と従業員の証言に矛盾がないかなどを調べている。違反を確認した場合は、同社側の意見を聞く「聴聞」の手続きを経て、整備工場ごとに行政処分を科すことになる。
法令違反は、不正の悪質性に応じて項目ごとに違反点数が定められており、点数の合計で民間車検場の指定取り消しや業務停止といった処分が決まる。指定が取り消されれば、2年間は再取得できなくなる。
街路樹枯死、損害賠償も
店舗前の街路樹が不自然に枯れていた問題を巡って、同社は7月28日にホームページ上で除草剤による影響を認めて謝罪し、原状回復に向けた手続きを行うとしている。各地の自治体の調査には、同社側から「除草剤を使った」「伐採した」などと回答があり、各自治体は警察に被害届を出したり、損害賠償請求する方針を示したりしている。
国交省も国が管理する国道に面した111店舗のうち10店舗の前にある街路樹が枯死したことを確認しており、損害賠償請求する可能性を示している。【内橋寿明】