斬新なデザインや未来的な仕様…“特殊性”を捨てなければもう間に合わない【開催できるのか 大阪万博「時限爆弾」】

【開催できるのか 大阪万博「時限爆弾」】#2
大阪・関西万博の開催が危ぶまれている最も大きな要因は時間です。開幕は2025年4月13日。現在から約1年8カ月後、残り620日となります。
一般的な建築の工期なら、着工から完成まで1年もあれば十分と考えられるでしょう。では、なぜ残り1年8カ月の現時点でゼネコン側から「間に合わない」との声が上がるのか? それは万博のパビリオンなどの着工前に、必要な設計と許認可の作業があるからです。
その設計もどんどん好き勝手に進めればいいわけではありません。法的な調査や現地とのすり合わせをしながら進めていく必要があります。その作業は通常であれば設計に半年、許認可に3カ月はかかり、現時点の残り1年8カ月は既に非常にタイトな状況です。
しかも、この場合の設計と許認可の工程はあくまで「通常」という条件付きです。この「通常」とは設計デザイン、設計仕様、使用素材、構造方式、地盤状態などが全て「通常」という意味です。平均値と置き換えてもいいのですが、万博のパビリオンは「通常」でしょうか。いや、むしろ「特殊」です。
参加153カ国・地域のうち56の国と地域が独自に建設する予定の海外パビリオンは、万博の「華」。各界の著名人がプロデューサーを務める「テーマ館」も同様です。いずれも独自性をアピールする分、積極的に「特殊」を標榜します。結果として斬新なデザインに向かい、未来的な仕様を考え、新素材を採用し、未知の構造方式を提案する。あらゆる建設条件が「通常」ではなく、はるかに逸脱する「特殊」をもくろむものなのです。
海外パビリオンの着工に必要な建設申請がいまだ1件で、テーマ館では入札不調が相次いだのも、この「特殊」が要因です。だから、今後の問題はそれらの「特殊」な傾向をどこまでくみ、どこまで削るべきか。拙速な工事を可能にする設計的な配慮を考えない限り、開催まで残り1年8カ月では到底、工事完成は間に合いません。
■いざ開幕してもアチコチが空き地に…
できるだけ早く、工事進行を中心に据えたデザイン方針に切り替えていかなければ、いざ予定通り開幕しても一部のパビリオンはまだ建設中。つち音が響く中、クシの歯が欠けるがごとく会場のアチコチに空き地が広がりかねないのが、実情なのです。
次回は建設が遅れている根本原因をさらに深掘りしていきます。(つづく)
(森山高至/建築エコノミスト)