海に囲まれた日本で再生可能エネルギーの「切り札」とされる洋上風力発電を巡る疑惑が浮上した。東京地検特捜部は4日、収賄容疑で自民党の秋本真利(まさとし)衆院議員(47)の関係先を家宅捜索し、強制捜査に踏み切った。「脱原発の旗手」とされてきた秋本氏。特捜部は、発電業者との「蜜月」の解明を進めている。
「国を挙げて洋上風力(発電)というものにしっかりと取り組んでいかなければならない」。令和2年2月、国会の予算委員会の質問に立った秋本氏はこう宣言した。
再生可能エネルギーはこれまで、陸上の風力発電や太陽光発電などが中心に進められてきたが、山間部の多い日本では、風力タービンやパネルを設置できる場所は限られる。一方、洋上風力発電は障害物も少なく、安定した風が吹いて効率的に発電できる上、騒音や景観問題が起こりにくい。
ある業界関係者は洋上風力発電について「政府にとっても、設置する港湾の整備費などのインフラ予算が獲得しやすい『金のなる木』。業者も必死の受注競争をしている」と解説する。
政府は平成31年、洋上風力発電事業を促進するための「再生エネ海域利用法」を施行。洋上風力の発電能力を令和2年の約2万キロワットから、20年後の22年までに3千万~4500万キロワットへと引き上げる目標も打ち出した。
同法の制定を推進してきたのが秋本氏だ。自民党内において数少ない脱原発派で、同党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の事務局長も務めた。平成29~30年には国交政務官の任に就き、後に「この洋上風力の法律をつくるため、国交省に政務官として行った」と振り返っている。
今回の疑惑で「契機」になったとみられるのは、秋田と千葉の3海域を対象に行われた洋上風力発電事業者の選定だ。
第1弾の大規模公募として注目を集めたが、大手総合商社が中心の共同企業体が令和3年12月、圧倒的な低価格で3海域とも受注。準備を進めてきた日本風力開発などの老舗業者が漏れ、業界に衝撃が広がった。
既に国交政務官を離れていた秋本氏は、翌4年2月の衆院予算委員会で、選定過程で価格の低さが重要視されたことを指摘。萩生田光一経済産業相に見直しを求めると、翌3月、経産省などは見直しを表明。同10月、公募の運用方針は価格だけでなく、運転開始時期なども考慮するように改訂された。
「洋上風力を受注しようと思えば、政治家に頼らざるを得ないと考える事業者はある」。風力発電事業に携わる関係者は、ため息を漏らした。(石原颯、桑波田仰太、末崎慎太郎)