国立なのにクラファン? 国立科学博物館(東京・台東区)が7日に標本や資料を保存する資金を集めるためにクラウドファンディング(CF)を開始し、約9時間で目標の1億円を達成した。一方で、「国立なのに国が予算を出さないのか」「税金の使い方を誤ってる」「万博よりも最優先に税金を投入すべきこと」と政府批判が巻き起こっている。同館がCFをやらざるを得なかった事情、そして別の狙いとは――。
国立科学博物館は1877年に創立。自然史や科学技術史の研究や資料の収集に保管、そして展示などを行っている。東京・上野だけでなく、茨城県つくば市の収蔵庫には化石など500万点が保存されているという。保存のためには資金が必要だが、燃料価格の高騰で光熱費が高くなっただけでなく、コロナ禍で入場者数が減少。CFで補うことになった。
返礼品にはトートバッグに隕石アクセサリー、バックヤードツアーなどが用意されている。目標1億円が午後5時過ぎには達成。11月5日までのCFだったが、今後はどうなるのか。
同館の担当者は「セカンドゴールとして1億5000万円を目指すことになります」と話した。もっとも、今の勢いだと次の目標もすぐに達成してしまいそう。それ以上はあるのか。
「(完売した返礼品を)追加できるか分かりません。ツアーも何人までなら見やすいというのがありまして、制限をなくすというのは難しいのです」(同)
まさにうれしい悲鳴なわけだが、一方でSNSでは疑問の声も上がっている。“国立”なのだから、「国が金銭的な支援をすべきではないか」という意見が出ているのだ。同館にもそうした「政府は何をしているのか」との声が少なからず寄せられているという。
実は「国立」と付いてはいるものの、正確には同館は独立行政法人だ。とはいえ入館料だけで運営は難しいので、すでに国から税金が投入されている。前出の同館担当者は「全部ではありませんが、当館は国の補助の上に成り立っています。国からいただいているけど、さらに自分たちでも稼ぐようにと言われている団体と考えてもらえれば」と説明。同館の総収入約35億円の約7割が国からの運営費交付金で、残りが入館料などの収入だという。
同交付金は昨年度が約25億円で今年度は約28億円と増えてはいるが、それでも増大する光熱費等を賄うには足りなかった。また、基本的には同交付金は「減っていくもの」(同)との認識で、自助努力をしないといけないという。ただ、それにも限度がある。
CFにはお金を集める以外の目的もある。「今までのファンの方以外にも裾野を広げ、CFを通して当館の活動を知ってもらいたい。展示室以外にもバックヤードがあって、そこで資料を守り、守った資料で研究ができ、その研究が展示などで皆さまに還元されているということを知ってもらい、ファンを増やしていきたい」(同)
ファンになってもらい来場者が増えれば入館料収入が増える。CFをきっかけにいい流れができるかどうか。