フィリピンで“かけ子” 強制送還の女が語った闇バイトの実態 「ルフィ」グループで…

指示役が「ルフィ」などと名乗る特殊詐欺グループの「かけ子」とされ、フィリピンから強制送還された女に18日、実刑が言い渡されました。闇バイトがきっかけだったという女。グループのもとで何があったのか。これまでの裁判で詳細に語っていました。

全ての始まりは、ツイッターで検索して見つけた闇バイトでした。すると、すぐにフィリピン行きのチケットが送られてきました。
「なんとなく“かけ子”だな」と思いながらフィリピンに渡った女は、約4年後、こう語りました。
「刑務所に入ったとしても日本に帰りたいと思っていました」
山田李沙被告、27歳。被害総額60億円以上の大規模特殊詐欺グループの「かけ子」として、窃盗の罪に問われています。これまでの裁判で、フィリピンでの“かけ子生活”を“赤裸々”に語りました。

2019年9月。組織から送られてきたチケットでフィリピンに渡った山田被告。男2人に出迎えられ、向かったのは、首都マニラ近郊にある廃虚となったホテルです。そこは、全国で相次いだ強盗事件との関与も疑われる渡辺優樹被告(39)がトップを務める組織のアジトでした。
組織のルールなどを説明され、渡航から4日目、「かけ子」が始まります。
山田被告(裁判での説明)
「その日1件“刺さりました”」
弁護士
「刺さるとは?」
山田被告(裁判での説明)
「(刺さる=)被害者が信じるということです」
すでに逮捕されている組織のメンバーは、山田被告について、「1日に何度もだましに成功し“無双状態”だった」。
そんな成果もあってか、幹部から靴やアクセサリーをプレゼントされたり、現金を渡されたりすることもあったといいます。しかし、こうしたプレゼント以外、いわゆる給料のような形の報酬は、1度ももらえなかったといいます。
山田被告(裁判での説明)
「(報酬は)1週間後とか1か月に1回とか聞いていましたが、結果的にもらえませんでした」
さらに、ある幹部からは、「お前はゲロ吐いてでも仕事しろよ」。
休むことを許されなかったという山田被告。“日本へ戻りたい”、そう思っても…
山田被告(裁判での説明)
「1度、『(逃げたら)殺す』と脅されました。やめたいのに、やめられない」
報酬を渡さず、休ませず、辞めることも許さなかった組織。
フィリピンに渡って、3年あまりがたった2023年1月。山田被告は、ある行動に出ました。
山田被告(裁判での説明)
「死ぬまで犯罪で生きていくのは嫌になって、大使館に行ったら逮捕されました」
山田被告はフィリピン当局に拘束され、現地の収容施設に入ることになりました。
山田被告(裁判での説明)
「解放されて、自由で、楽になって。刑務所に入ったとしても日本に帰りたいと思いました」
そして2023年3月。3年半ぶりに、容疑者として日本に帰ってきました。
記者
「まっすぐ前を見据え…、あっ、いま一礼をして歩いていきました」
山田被告は、何度も頭を下げていました。

7月に始まった裁判。8月18日に言い渡された判決は…
裁判長
「被告人を懲役3年に処する」
言い渡された直後、顔を真っ赤にし、何度も目元に手をやった山田被告。
全容解明に向け、警視庁は一連の強盗事件についても調べを進めています。