神戸市の基幹病院「甲南医療センター」の男性医師=当時(26)=が長時間労働の末に昨年5月に自殺し、西宮労働基準監督署が労災認定した問題で、遺族が18日、大阪市内で記者会見し、死亡まで100日連続勤務していたと労基署が認定したことを明らかにした。すでに病院の運営法人などを労働基準法違反罪で同労基署に告訴しており、損害賠償請求訴訟も検討している。
死亡したのは高島晨伍(しんご)さん。令和2年4月に研修医、4年4月からは消化器内科で「専攻医」(旧後期研修医)となったが、昨年5月に自宅で自殺した。
労基署の認定によると、死亡約3カ月前から休日がなく、直前1カ月間の時間外労働は207時間50分。3カ月平均でも月約185時間で、国が定める精神障害の労災認定基準(1カ月160時間以上、3カ月平均で月100時間以上)を大幅に上回っていた。
母、淳子さん(60)によると、晨伍さんは医師である父に影響を受け、同じ道を志した。「優しい医師になりたい」と熱心に仕事に取り組んでいたが、昨年2月ごろから業務量が増え、死亡直前には「しんどい」「誰も助けてくれない」とこぼすようになった。
遺書には「知らぬ間に一段ずつ階段を昇っていたみたい」「おかあさん、おとうさんの事を考えてこうならないようにしていたけれど限界です」などとつづられていたという。
淳子さんは「病院からはいまだに正式な説明や改善策の提示はなく怒りを感じる。息子の人生を傷つけたことに向き合い、誠意をもって対応してほしい」と訴えた。
一方、病院の具英成(ぐえいせい)院長は17日に記者会見し、認定された時間外労働には、高度な専門性を身に付けるための「自己研鑽(けんさん)」や睡眠時間などが含まれているとして、「全てが労働時間にあたるわけではない」と主張。「自主性を考慮した職場環境で、過重な労働を課した認識はない」との見解を示している。