イーロン・マスク氏が「X」(旧ツイッター)上でブロック機能(特定のアカウントによる閲覧などを制限)をやめる方針を明らかにした。
この話題をスポーツ新聞はどう報じたか?(8月20日)
『X ブロック機能廃止へ 河野デジタル相困る?』(スポーツ報知) 『どうする?「ブロック太郎」』(日刊スポーツ)
ブロックを“愛用”する河野太郎デジタル相について心配していたのだ。スポーツ紙のいじわる……。
話はここからが本番です。今回は「河野太郎氏の話のすり替え」についてです。いろいろつながっていることに改めて気づきました。
なぜブロックを多用するのか
河野氏はなぜブロックを多用するか聞かれて「誹謗中傷するような人は遠慮なくブロックさせていただいている」と以前に説明していた。しかしこれはすり替えで、河野氏はエゴサーチして自分への「論評」「批評」者もわざわざ探し出してブロックしているのだ。
政治家の「エゴサブロック」はとても怖い問題だ。私的なつぶやきだけでなく政治的、公的な情報も発信する場合、論評する人もブロックしてしまうとどうなるか。政治家が自分に都合の良い空間をつくり、情報発信できてしまう怖さがある。
それなのに河野氏はあたかもブロックした人すべてが誹謗中傷しているかのように話をすり替えているのだ。本当に誹謗中傷に困っている人がいるのに平然と。保険証のなりすまし問題を思い出します。
河野氏の「話のすり替え」というキーワード、実はほかにも繋がっています。
3カ月分ってどういう意味?
最近ではトラブルが相次ぐマイナ問題で「担当大臣としてけじめをつけるべきだ」として閣僚給与3カ月分を自主返納すると発表した。これもすり替えです。マイナ問題の対応がダメだからしばらく給料抜きだ、夕飯抜きだ! なんて誰が求めたのでしょうか。
そもそも「閣僚給与3カ月分」の3カ月分ってどういう意味でしょう。もしかして「婚約指輪は給料の3カ月分」という昭和のCMフレーズをまだ引っ張っているのだろうか。だとしたらおめでたい。
河野デジタル大臣にマイナ問題で求められていたのは給与の返納ではなく、
《普及を優先するあまり国民の不安を軽視していると受け取られれば、取り組みへの信頼を損なう恐れもある。》(毎日新聞8月18日「記者の目」)
問われていたのはこういう態度だったのでは?
読売新聞はマイナ中間報告について「ひも付け 丸投げのツケ」と厳しく書いていた(8月9日)。「認識が、各ひも付け機関の中で薄かった」という河野大臣の発言を「責任転嫁とも受け止められかねない」とも指摘している。
発言の行間から感じるもの
次の発言も気になります。河野氏は8日の会見で、保険証の誤登録1069件について「点検データの0.007%」と説明した。
《あえてこの数値を紹介する意図は、全体から見ればごく少数、ということなのか。しかし医療データを誤登録された人にとっては重大事だ。》(信濃毎日新聞8月10日、社説)
河野氏の言葉からは、ごく少数、気にしているお前らがおかしいという行間を感じます。
《医療に関する手違いは、国民の健康や生命に重大な影響を及ぼす恐れがある。政府は事態を軽視してはならない。》(6月7日)
と読売社説は以前から言っています。少数ならどうでもいいのでしょうか?
整理しておくと、マイナ問題は初期にありがちな現場のミスだけが問題なのだろうか。そうではなく自治体などへの責任転嫁などを始めとする政府の態度を多くの人が問題にしているのでは。結局これも「話のすり替え」にギョッとしているのだ。
混迷を極め、喜劇的な展開に…
マイナ中間報告の翌日(8月9日)、新聞各紙に共通していたのは「マイナ総点検と自治体」についての見出しだった。
朝日『自治体困惑 点検の負担重く』 読売『総点検 自治体に負担』 毎日『今後の点検 自治体不安』 産経『膨大作業 疲弊する自治体』 東京『マイナ総点検 自治体困惑』 日経『自治体に負担、支援不可欠』
地方紙は、いかに地元の現場が『膨大作業 疲弊する自治体』(産経新聞)という状態に追いやられているか、いちいち報道する機会がやってきた。
そして今回の問題は喜劇的な展開にもなっている。マイナ保険証の未取得者に代わりとなる「資格確認書」が交付されるため、
『「二つの保険証」こうなる』
という記事もあった(東京新聞8月11日)。
真面目に解説している記事なのですが「二つの保険証」って、平成初期に勃発した「加勢大周、新加勢大周」の2人を思い出してしまいます(各自確認)。あの混乱も事務所とのトラブルから発生した珍事でした。
真面目な新聞記事なのに面白いというのはこちらもそう。
『マイナ保険証 資格確認書 上限5年』(読売新聞8月4日)
真面目な解説なのに怪しさが…
「資格確認書」の運用見直しを解説した記事です。これを読むと怪しい勧誘などに政府が注意喚起を呼びかける「政府広報」を思い出してしまうのです。試しにあなたの脳内の政府広報と一緒に読んでください。
「マイナカードの相次ぐトラブルを踏まえ、国民がマイナ保険証と資格確認書のどちらも選択できる環境を整え、不安解消につなげる狙いがある」(読売)
「ちょっと待って! それって保険証じゃないですか?」(政府広報)
「資格確認書は、医療機関の窓口で提示すれば、保険診療を受けることができるものだ」(読売)
「ちょっと待って! それって保険証じゃないですか?」(政府広報)
「資格確認書の様式については、現行保険証と同じ紙やプラスチックのカード型とし」(読売)
「ちょっと待って! それって保険証じゃないですか?」(政府広報)
ああ、真面目な解説記事なのになぁ。でもそろそろホントに政府広報で呼びかけてみては。
(プチ鹿島)