京アニ事件初公判 「被告の話を聞いて」 弁護側の冒頭陳述要旨

京都アニメーション放火殺人事件を巡る青葉真司被告の初公判で、弁護側が明らかにした冒頭陳述の要旨は次の通り。
事件の背景
被告にとって起こすしかない事件だった。被告の人生をもてあそぶ闇の勢力への対抗手段、反撃だった。被告の話を十分聞いてほしい。
事件に至る経緯
被告は20歳から28歳までコンビニでアルバイトをしていた。人間関係がうまくいかずに行き詰まり、気持ちが乱れるようになった。その後に母親と暮らすようになり、工場で働き始めたが長続きしなかった。家族と言い争ったり、家の壁に穴を開けたりして物に当たる生活だった。
31歳の時、京アニ作品に感銘を受けて小説を書き始めた。インターネット掲示板で、有名なライトノベル編集者から「いいものを見せてくれたな」と言われ、京アニの監督もアドバイスをくれた。
自分の作品を監督にあげてもいいと書き込んだこともあるが、掲示板での関係は悪化していった。監督の言葉から前科がばれていると感じて混乱した。その結果、コンビニ強盗事件を起こした。
服役中の刑務所で不思議なことが起きた。ある人物から休憩時間に見るテレビのCMや貸し出し用の本を通じ、メッセージが送られてくるようになった。
出所後に再び小説を書き始め、京アニに長編と短編を応募した。長編を応募した日、監督がブログを更新した。その内容を見て、監督が自分の作品を読んだと分かった。落選したが、被告は闇の勢力が仕組んだものだと思った。
3カ月後、監督のブログに自分の小説のアイデアが書かれていた。被告は「闇の勢力と京アニが一体となって自分に嫌がらせをしている」と思い、混乱した。闇の勢力との関わりを絶ちたいと思い、2018年1月、小説のネタをかき集めていたノートを燃やした。
18年11月、テレビを見ていると、京アニの「ツルネ」という作品が放送されていた。被告は「これもアイデアが盗まれていたのか」という感情になり、闇の勢力と京アニからはどうやっても逃れられないともがき苦しむようになった。
19年2月には、他人との関わりを絶とうと通院をやめ、翌3月には訪問看護にも居留守を使うようになった。スマートフォンも解約した。6月に大宮駅前で大量殺人を計画。事件を起こすことで「京アニも闇の勢力も思い知るだろう」と思ったが、未遂に終わった。
事件4日前の7月14日、隣人とトラブルになり相手の胸ぐらと髪の毛をつかみ「失うものはない」と言った。翌日、闇の勢力と京アニを消滅させるために京都へ向かった。
裁判員に向けて
本件は被告の刑事責任能力が問題になっている。被告がまず何をしたのかを把握し、その責任を問えるのかが検討の順序となる。公判では精神科医2人の証言を聞いて判断してもらう。責任能力を判断する上で参考にしてほしいのが、「裁判所は(専門家の)意見を十分に尊重して認定すべきである」と示した08年の最高裁判決。責任能力の判断は複雑で、専門家のフィルターを通じて議論すべきだ。