鉄道会社のダイヤ改正、どんな狙いがあるのか

今年の春、鉄道各社では大きなダイヤ改正が行われた。JR全線だけではなく、多くの私鉄や地下鉄などが、一斉にダイヤ改正を行った。だがそんな中で、ダイヤ改正を行わなかった鉄道事業者がある。京成、京急、相鉄だ。

相鉄はそれ以前にダイヤ改正を行っており、そのダイヤ改正は「相鉄だけのダイヤ改正では最後となる」ものだった。相鉄は11月30日にJR東日本とあわせてダイヤ改正を行い、埼京線と直通することになる。

このほかにも、10月26日にダイヤ改正を行う鉄道事業者がある。京成と京急だ。関連して、都営浅草線はダイヤ改正を行い、北総鉄道はダイヤ修正を行う。

それにしても一体なんのために、ダイヤ改正を行うのか。10月に行う各社の狙いは何か。各社の発表より、その狙いを考えてみたい。

成田アクセス圧勝をめざす京成電鉄
成田空港へのアクセスは、京成の「スカイライナー」、JR東日本の「成田エクスプレス」、リムジンバス、格安の空港バスと、さまざまな手段がある。その中で、京成のスカイライナーは定時性と速達性にすぐれ、かつ比較的安いので、日暮里からの利用(列車自体は京成上野発)という多少不便な要素もありながら、多くの利用者を集め、し烈な競争の中で確固たる地位を築いている。

そんな成田空港へのアクセスをさらに便利にし、空港アクセス鉄道としての京成「スカイライナー」の地位を盤石にするために、ダイヤ改正を行う。

今回のダイヤ改正では、全車座席指定の有料特急「スカイライナー」を1.4倍、41往復とし、終日20分間隔で運行することになった。成田空港の利用者が増加する中で、10月末からの空港運用時間延長に対応し、「スカイライナー」の利用者を増やそう、という狙いがある。

しかも京成上野発毎時00分、20分、40分とダイヤを固定させ(日暮里の発車時刻はそれぞれ5分後)、ほぼ待たずに乗れる列車となった。

また成田空港への最終列車は午後8時20分発、午後9時08分着となり、遅い時間帯の飛行機にも対応できる。もちろん、海外からの到着への対応についても同じで、午後11時20分成田空港発、午前0時04分京成上野着と、遅い時間まで対応できるようになった。この速達性により、東京23区内ならば終電やタクシーを駆使すれば深夜のうちに家に帰れることになった。

早朝便への対応も、京成上野午前5時40分、成田空港午前6時24分発となったので、成田への前泊も必要がなくなってきた。成田は遠いから前泊が必要、と言っていたのは昔のことになる。

空港側としても、羽田・成田と2つの国際空港が東京圏にある中で、成田のアクセスは不便だと言われていたものの、それを改善するということにもなる。

この利便性向上のために、京成は「スカイライナー」の車両1編成を増備した。「成田空港へ行くには、ウチが一番便利である」というのが、今回のダイヤ改正の狙いである。

対抗するJR東日本は
成田空港で飛行機の離発着が夜遅くまで可能になったことを受け、JR東日本はどんな手を打つのか。10月27日より千葉行の午後11時45分発の普通列車を運行させ、対応させる。JR東日本は現在、午後11時00分発の東京行快速を運行している。だが東京着は午前0時29分と時間がかかり、スカイライナーのライバルにはなりえない。また千葉までの最終列車は、都心へのアクセスというよりも、千葉県内の利用者の利便性のため、という要素が大きい。

11月30日のダイヤ改正で「成田エクスプレス」を増発するという話はいまのところなく、2020年3月のダイヤ改正で行われるかどうかが焦点となる。しかし、東京駅や新宿駅など都心の駅へのアクセスは優れていても、時間がかかって料金もかかる成田エクスプレスが空港アクセス利用者を呼び戻せるかというと、なかなか難しい。

成田空港アクセス全体で考えると、夜の遅い時間帯や朝の早い時間帯は、23区以外からは各地からのバスが中心となるのではないか。その時間帯ならば、道路も混まない。スカイライナーの最終便や始発がターゲットとするのは日暮里から比較的距離の近いエリアの人だと考えられる。

京急のダイヤ改正、「座れる」を強化
京急電鉄は同じく10月26日のダイヤ改正で、「座れる」を重視することになった。平日朝ラッシュ時の着席保証列車「モーニング・ウィング号」を2本から3本に増発する(1号は踏切事故による車両破損の影響で当面の間運転休止)。これまで三浦海岸発の列車が2本だったのに加え、横須賀中央発の1本が加わる。

朝の時間帯の着席保証列車は好評で、満席に近いため、さらに増発して利便性を向上しようとするのが狙いだ。使用車両は2100形。座席が一部を除き進行方向を向いているのが特徴だ。なお、平日夕方・夜間の「ウイング号」は「イブニング・ウィング号」に名称変更する。

またこの車両を利用した快特の土休日運転列車の中で、下り9本、上り8本には「ウイング・シート」を導入する。泉岳寺~三崎口間の快特で40分間隔の運行となり、乗車駅は指定されるものの、すべての快特停車駅で下車可能だ。

8両編成の2号車に「ウィング・シート」を設け、会員登録制サービス「KQuick」でのみ座席指定券を購入できるようにする。料金は、300円。

快特に使用される車両の中でも、3扉ロングシートの車両よりも、2扉進行方向向きの2100形は快適であり、デラックス感がある。京急のフラッグシップ車両として人気が高い一方、なかなか座れない。そういった状況を解決するために、京急は土休日限定ながらも「ウイング・シート」を設ける。

京急久里浜駅の近くには、JR横須賀線の久里浜駅もある。こちらの駅からは、自由席ながらもグリーン車を連結した列車が頻繁に運行されている。地域住民からは京急のほうが支持は高いようで、そういう選択肢があることは京急も承知していたのだろう。2100形快特の快適さと利便性を全面的に味わってもらうための方法論として、「座席指定車両」を導入したと考えられる。

京成・京急、なぜ同時にダイヤ改正?
「なぜ離れた京成と京急が同じ日にダイヤ改正を?」と思う人もいるかもしれない。しかし、両社は都営浅草線を通じてひとつの運行体系を共有しており、またその中に北総鉄道なども含まれる。それゆえ、同じ日にダイヤ改正(北総鉄道は「ダイヤ修正」)が行われるのだ。

京成・京急などは都営浅草線を介して相互乗り入れし、共通のネットワークをつくっている。だからこそ、同時にダイヤ改正は行われるのだ。

今年の3月に多くの鉄道事業者が同時にダイヤ改正を行ったのも同じ理由だ。それぞれが相互に乗り入れており、一緒に改正をやらないと混乱が起こる。各社が歩調を合わせないと、いまの鉄道は動かないのだ。

ダイヤ改正には、それぞれ狙いがある。しかし、狙いは違っても、同日に行わなければならない理由もまたあるのだ。

(小林拓矢)