36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第14回公判が26日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれ、起訴後に被告を精神鑑定した東京医科歯科大大学院の岡田幸之(たかゆき)教授(司法精神医学)が証人として出廷した。岡田氏は、被告に精神疾患である重度の妄想性障害があったとの鑑定結果を示し「妄想が動機形成に影響した」と述べた。
起訴前に鑑定した別の医師は被告について、精神疾患ではない「妄想性パーソナリティー障害」とし、妄想の犯行への影響は「ほとんど認められない」と証言した。公判の焦点である妄想を巡り、鑑定医2人の見解が分かれたことになる。
この日証言した岡田氏は、弁護側の請求を受けた裁判所の依頼で精神鑑定を行った。起訴後の令和3年9月~4年2月、1回あたり約3時間の面接を計12回行った。
岡田氏は犯行当時の被告が重度の妄想性障害だったと証言。30歳ごろから、過去に逮捕された事件に関して妄想を抱くようになったと述べた。その上で「客観的には妄想に見えても、本人からすれば妄想とは思っていない」とも指摘した。
岡田氏は、障害が放火殺人事件の動機形成に影響を与えたと認める一方、犯行は妄想によって命じられたものではないと証言。犯行当時、被告は殺人が犯罪行為であるとの認識を持っていたとも説明した。
また鑑定の際、被告が「裁判は極刑以外ありえない。早く終わらせたい」と語っていたと明かした。
次回公判では鑑定医2人に対し裁判官や裁判員による尋問が行われる予定。