女性区長を辞職に追い込んだネット有料広告、主婦落胆「有権者には悪くない」「ワナ多すぎる」

東京都江東区の木村弥生区長(58)陣営を巡る公職選挙法違反事件は、東京地検特捜部の捜索からわずか2日で木村氏が辞職に追い込まれる事態となった。記者会見した木村氏は、捜査協力のために公務に影響が出るとして「区政を停滞させてはいけない」と述べたが、事件への関与については最後まで言及を避けた。区民に「疑惑」を残し、就任から約半年で区役所を去ることになった。(大原圭二、増田知基)

会見冒頭、木村氏は「申し訳ない思いでいっぱいです」と謝罪したが、質疑では「未練」ものぞかせた。
区長選では「クリーンで開かれた区政」を掲げていた木村氏。「このような形で終わることをどう思うか」と問われると、「みなさまに心配をかけたことに 忸怩 (じくじ)たる思いがある。残念ですが、辞職して区政の停滞を招かないことが重要」と強調した。
また、「区民の政治不信を招いたのでは」と指摘されると、「投票してくださった方が、どれだけがっかりするかと考えると、切ないですし……、大変切ないです」と言葉を詰まらせた。
4月の区長選で陣営関係者が、木村氏への投票を呼びかけるインターネットの有料広告を掲載したことについて、木村氏は「見ていなかった」などと釈明していた。会見では、改めて木村氏の関与に関する質問が相次いだが、「捜査中なのでお答えを控える」と繰り返し、最後まで説明することなく会見を終えた。

会見後、木村氏は辞職届を区議会の山本香代子議長に提出。11月15日付で辞職する。公職選挙法の規定で、議長は受理翌日から5日以内に区選挙管理委員会に通知し、区長選はその翌日から50日以内に行われる。辞職まで木村氏は公務を行わず、副区長が代理を務める。区によると、木村氏の在任期間は区政史上最短という。

受理後、山本議長は「これから来年度予算を作っていく時期。(辞職する事態になり)戸惑っている」と険しい表情を見せた。
ある区幹部は「区長は職員の話をしっかりと聞いてくれて、好印象を持っていたので残念。ただ、捜索を受けた以上、辞職はやむを得ない。忙しくなる時期だが、職員一丸となって乗り切りたい」と述べた。

4月の区長選では福祉や子育て政策の充実を訴えていた木村氏。区政運営に期待していた区民も多く、戸惑いの声も聞こえた。
区内で乳児を育てる主婦(31)は「より子育てがしやすい地域を作ってほしかった」と落胆。「動画広告の再生が多かったのなら、みんな注目していたということ。ネットで候補者の名前が知れることは有権者にとっても悪くないはず。使う側にとってワナが多すぎる気がする」と語った。
会社員の女性(22)は、「女性政治家は今、期待が大きいだけにすぐ辞めてしまうのは残念。女性ならではの視点を政策に生かしてほしかった」と惜しんだ。