新型出生前診断、いまだ多い非認証施設のトラブル、新制度開始から1年

胎児の染色体異常を調べる「新型出生前診断(NIPT)」を巡り、検査の実施施設を認証する新たな制度がスタートし、1年がたった。関連学会は要件緩和で認証施設拡大を目指したが、非認証施設を利用してトラブルが報告されるケースはいまだ多く、妊婦のサポート体制の在り方はなお課題が残る。
「この10年でNIPTの認知は進んだ。『子供の状態を早く知りたい』『おなかの赤ちゃんが安全なら受けたい』と望む人は増えている」。認証施設の一つである昭和大病院(東京都品川区)の産婦人科医、白土なほ子氏はそう語る。
同院では、遺伝医療の専門医も多数勤務し、妊婦らのサポート体制を構築。検査前後の丁寧な説明のほか、陽性報告を受けた家族の不安に寄り添う支援も担ってきた。
一方、来院者には非認証施設で検査を受けた女性もおり、「陽性と告げられたが、詳しい説明をしてもらえず、動揺した様子の人も少なくない」(白土氏)。確定診断のための羊水検査を受け、胎児に異常がないと分かるケースも存在する。
白土氏が研究代表を務めた厚生労働省研究班が2~4月、妊婦向けアプリを通じて調査したところ、NIPT受検者のうち認証施設の利用は691人(57%)、非認証施設は283人(23%)、認証・非認証の区別がどちらか分からなかったと240人(20%)が回答した。新制度移行前の令和2年から比率に大きな変化は見られなかった。
白土氏によると、非認証施設での受検者は、インターネットで検査予約が可能といった利便性や検査項目の多さを重視する傾向が強まっていた。
一方、調査では認証、非認証の〝違い〟も浮き彫りとなった。NIPTは中絶の判断に影響を及ぼす可能性もあり、検査前後の丁寧なカウンセリングが重要とされる。だが、検査結果の開示方法は、認証施設では74%が「検査施設で結果提示と口頭説明」だったのに対し、非認証施設は「郵送・FAX・メール・ネット上」が95%に上った。
非認証施設では精度が不確かとされる検査項目の提示も目立つ。調査では、陰性以外の結果だった人のうち非認証施設で検査した75%が「検査後の説明が不十分で不安が強まった」「検査結果後の対応も検査施設がすべき」と答えた。
白土氏は「認証制度の存在を知らない人もいる。正しい情報を届けるためにも認証施設で検査を受けてほしい」とし、さらなる環境整備が必要との認識を示した。

「受けるべきか、受けない方がいいのか迷っている」「結果を家族にどう話せばいいのか」-。産婦人科医や看護師、助産師らが中心となり、NIPTを含む出生前検査に臨む妊婦らの相談を受けるNPO法人「親子の未来を支える会」(千葉市)には日々、さまざまな声が届く。
相談者に共通するのはわが子が健康であってほしいとの思い。だが、検査で予期せぬ結果を告げられ、不安に陥る人もいる。「『どんな子でも受け入れようね』とご夫婦で話し合われていても、陽性の結果に、産むか中絶するかを迷う人も多くいる」。相談員の女性(55)はそう明かす。
ダウン症の子を持つ親や、胎児がダウン症と診断されて中絶した人をつなぐこともある。経験者に本音を話すことで、相談者自身が悩みの核心にたどり着くことも多く、おのおのが答えを導き出していくという。
「誰にも言えなかった思いを受け止めてもらえた」「話ができて気持ちの整理がついた」-。同会にはそんな感謝の言葉も寄せられる。同会代表理事で産婦人科医の林伸彦氏は、「NIPTを提供する施設は増えているが、妊婦が安心して相談できる場所は少ない」とし、こう力を込めた。
「胎児の病気を知り、自分自身を責める人もいる。妊婦が抱える思いに寄り添い、それぞれの選択を支えていきたい」
(三宅陽子)

新型出生前診断(NIPT) 妊婦の血液からダウン症などの原因になる3つの染色体異常を調べる。確定診断には、胎児を包む羊水を抜き取り調べる羊水検査が必要。平成25年に日本産科婦人科学会の指針に基づき、認定を受けた大学病院などで始まったが、無認定の施設が増加した。昨年7月に導入された新認証制度では一定の条件を満たせば、小規模なクリニックでも認証を受けることが可能になった。認証施設は今年10月時点で478に上り、新制度導入前の約4・4倍となった。