警察「武器を捨てろ!」住民には「顔を出さないで」…埼玉の立てこもり、緊迫8時間

埼玉県戸田市の病院と蕨市の郵便局で31日午後、発砲事件と立てこもり事件が相次いだ。白昼の凶行は、子供たちの下校見合わせや住民の避難など、市民生活に影響を及ぼした。県警は人質強要処罰法違反容疑で緊急逮捕した元組員の鈴木常雄容疑者(86)が、バイクで移動しながら連続して起こしたとみている。郵便局内に取り残された女性局員2人は夜になって保護され、深夜には鈴木容疑者の身柄も確保された。
午後1時13分、戸田中央総合病院にいた女性から110番が入った。「拳銃のようなものを持った人物がバイクで逃げた」。県警によると、鈴木容疑者とみられる男が屋外から1階診察室に向かって窓越しに発砲し、そのままバイクで走り去ったという。室内にいた40歳代の医師と60歳代の患者の男性2人が頭部を負傷した。病院関係者によると、窓ガラスはクモの巣状に割れ、診察室の床には血だまりができていた。
立てこもりの発生は1時間後の午後2時14分。蕨郵便局の局員から「拳銃を持った男が来た」と通報があった。県警は防弾装備を着けた捜査員らも投入し、郵便局を包囲した。
「武器を捨てろ!」。捜査員らが叫ぶなか、午後2時43分、「パーン」と乾いた破裂音が響いた。鈴木容疑者が局内で発砲したとみられ、捜査員らが「離れろ、急いで」と、周囲にいた住民ら十数人に遠ざかるよう促した。ベランダから顔を出して様子を見ていた住民にも、「顔を出さないで」と大声で叫んだ。
現場は、蕨市役所などが所在する市街地で、近くには学校もある。下校せずに校内で待機していた小学校1校の児童300人超が午後6時35分、郵便局から約1キロ離れたコミュニティーセンターに県警の車で送り届けられた。センターには、不安な面持ちの保護者らが続々と迎えに訪れた。
小学3年の女児(9)は「本当に怖くて、ずっと不安だった」と涙を流し、30歳代の母親は「娘の無事が確認できて、ほっとしている。こんな事件を起こした犯人は許せない」と語った。
日本郵政によると、局内ではこの日、約130人が勤務していた。事件発生直後にほとんどが外に避難したが、女性局員2人が逃げ遅れた。県警の捜査員が郵便局に電話をかけ、応じた鈴木容疑者に女性らの解放と投降を求めた。鈴木容疑者が興奮した様子を見せることはなかったという。
午後7時17分、女性局員1人が出入り口から外に出てきた。女性は警察官に抱えられ、救急車で搬送された。もう1人の女性も午後9時4分に保護された。2人とも目立ったけがはないという。県警はその後も鈴木容疑者への説得を継続。立てこもりから約8時間後の午後10時20分、捜査員が局内に突入し、1分後に鈴木容疑者の身柄を確保した。