「ツール・ド・北海道」死亡事故…協会は「警備員が規制前に事故車両に気づき、コースから出るよう要請」と新たに説明も、来年の開催困難の見通し

国内最大規模の自転車ロードレース「ツール・ド・北海道」の死亡事故は、発生から間もなく2か月…事故を検証、再発防止策などをまとめる第三者委員会の初会合で、大会を主催、運営する協会は「規制前、コースに入った事故車両に警備員が気づき、選手が来る前にコースから出るよう要請していた」などと新たに説明しました。
第三者委員会は、萩原教授を座長とする下記のメンバーで発足し、来年3月をメドに再発防止策などをまとめる方針です。
<第三者委員会のメンバー> ・萩原 亨 北海道大学 大学院工学研究院 教授 ・甲谷 恵 公益社団法人 北海道交通安全推進委員会 筆頭副会長 ・林 辰夫 アジア大陸自転車競技連合 理事 ・宮澤崇史 2008&09年のツール・ド・北海道で優勝 元自転車プロロードレーサー

・武藤俊雄 北海道大学 公共政策大学院 准教授
事故発生は、9月8日午前11時37分ごろ…上富良野町の道道のコースで、レース中の中央大学の4年生、五十嵐洸太(いからし・こうた)選手21歳が反対車線の乗用車と正面衝突し、死亡しました。
この事故を受け、今年の大会は、3日間(9月8~10日)の全日程が中止…事故による中止は、37回目の大会史上、初めてでした。
警察によりますと、現場はカーブが連続する片側1車線の山間路で、自転車の走行車線を警察が公式に規制、事故車両が走行の反対車線を大会を主催、運営する公益財団法人「ツール・ド・北海道協会」側が警備、規制していました。
協会は、現場のコースについて「監督会議などで反対車線への自転車のはみ出しを禁止していた上、反対車線は車両の通行を規制していた」と説明。
現場のコースの通行規制は、午前10時40分~午前11時45分…警察の調べで、事故は、この規制の時間内に発生していたことが特定されています。
・警察への通報 午前11時51分 ・消防への通報 午前11時43分 ・事故発生 午前11時37分
事故車両を運転の63歳の男性は、警察に対し「(コース内にある)吹上温泉に向かうため、規制前だったので、そのまま通行した。現場近くの駐車場で、レースを見た」などと話しているということです。
これに対し、協会は、29日午後に開催された第三者委の初会合で、新たに下記の調査内容などを公表しました。
・規制前の午前10時10分ごろ、すでに事故車両はコース内に入り、自転車の走行車線と反対車線を行ったり来たり
・気づいた警備員が運転の男性に対し、自転車が来る前に自転車の走行車線を上富良野町側にすすみ、コースから出るように要請
・五十嵐選手は、第4集団の21人の中にいたが、その第4集団の約2キロ先方まで先導車なし
仮に、事故車両が関係者の要請に応じ、コースから出ていたら、事故は発生しなかったことになります。
また、第4集団の先方に先導車がいて、反対車線を走行する車両を早めに発見、後方の集団に注意を促せば、事故を防げた可能性もあります。
しかし、男性は反対車線の路肩に駐車するなどした後、コース内を走行し、五十嵐選手の自転車と衝突しました。
男性から直接、状況を聴いたのかなどについて、協会は「コメントできない」としています。
一方、事故車両とは別の車も、通行規制中のコースを走行していたことがわかっています。
その車は、車窓からの風景などを撮るカメラを載せていました。
運転していた男性によりますと、まず、コースの入口前に立つ警備員と通行規制前に言葉を交わしたものの、特に詳しい説明がなく、止められた認識もなかったので、コースに向かうと、2人目の警備員もスルー…ドライバーの目につく看板なども見当たりません。
次に、コース内の警備員、その次の警備員は、既に通行規制に入っていたと思われるのに、2人ともスルー…ここでも、通行規制が一目でわかる看板などはありませんでした。
やがて、車は、レース中の選手を先導する何台ものバイクとすれ違いますが、皆、右手を上げて、左側に寄るようなジェスチャーをしただけだったので、男性は「走行するな」の指示までとは思わず、走行を続けたといいます。
そして、路肩に駐車していた事故車両の横を通過…これでは、走行していた車を見て、事故車両の男性が「通行規制が終わり、もう走行してもいい」などと思い込んでしまった可能性が否定できません。
さらに、映像には、追い越しをかけたわけではないのに、猛スピードもあってか、センターラインからはみ出したり、センターライン上を走ったりする自転車が相次ぎ、セイフティーネットとして、反対車線の通行規制が必要だったことが伺えます。
出場していた選手の1人は、一連の映像を見て「ガードマンは全く役割を果たしていない。先導のバイクも手を振って通り過ぎるだけ。運営側、協会に大きな責任があるのは明らか。はみ出した選手の過失が大きいとされるのは、同じ選手として納得できない」と憤ります。
第三者委の初会合後、あらためて来年の大会開催について問われると、協会は「(開催ありきではなく)安全対策ありき。オフィシャルには、何も決まっていない」と明言を避けました。
しかし、開催ありきか?の問いに対しては「安全対策ありき」と応じました。
さらに、死亡事故の発生で、UCI=国際自転車競技連合の審査を通らず、国際大会と認定されない可能性が高い上、例年なら既に始まっている自治体との調整なども難しいとみられ、来年の開催は難しい見通しです。
一方、警察は、協会や事故車両の男性から事情を聴くなどし、刑事責任を問えるだけの過失があるのか、捜査を続けているというものの、逮捕案件ではなく、事故車両のドライブレコーダーの有無、その後の男性の話など、途中経過は明らかにしないとしています。