岩田明子 さくらリポート 場当たり的「減税」…岸田首相は何をしたいのか 批判噴出の根本的要因 責任ある長期的ビジョン示せ

岸田文雄政権が打ち出した「減税」策の評判が芳しくない。岸田首相に対する「増税メガネ」との批判を払拭する狙いがあったとみられているが、「1人当たり所得税と住民税を4万円減」「非課税の低所得世帯には1世帯7万円給付」という内容に、ネット上では「詐欺」「減税嘘メガネ」という表現まで飛び交っている。
ここまで厳しい評価が出る背景は、岸田首相が描こうとする全体像が一向に見えず、対応が場当たり的に変化したように見えることが挙げられる。
減税検討の発端は、9月25日、岸田首相の「税収増などを国民に適切に還元する」という発言だった。
するとにわかに減税に対する関心が高まり、自民党の世耕弘成参院幹事長などから「法人税と所得税の減税も検討対象になる」など、具体的な税目に関する発言が相次いだ。だが、岸田首相が周辺に不快感を示したため、自公政調会長はあえて、新たな総合経済対策に向けた提言案から「減税」に関する記載を削除。岸田首相自らが10月20日、自公の政調・税調幹部に期限付きの所得税減税を検討するよう指示して議論のスタートを切るという形をとった。首相の方針が迷走しているかのようなプロセスだった。
紆余(うよ)曲折の末、出てきた内容もチグハグ感がぬぐえない。
岸田首相は26日の政府与党政策懇談会で、「賃上げが物価に追いつくまで政府として支えることが肝要だ」と述べたが、「減税期間は1年」を想定しているという。1年程度の減税では消費回復につながらないという見方も出ているし、仮に賃上げが追いつくまで減税を続けるとした場合、今年度の税収が上振れしなかった際の財源をどう確保するかに関しても不透明なままだ。
防衛増税との矛盾も指摘されている。
防衛力の抜本強化に伴う増税について国民の理解を求めたにもかかわらず、その財源確保策は先送りとなっている。その状況で減税を打ち出しても、将来的に増税があれば減税効果は薄まる。このため、税収増分を減税ではなく、防衛費に回すべきとの意見もある。
こうした批判噴出の根本的要因には、岸田首相が「日本を今後どうしていくか」という全体像を国民に示せていないことが関係している気がしてならない。
国民の生命と財産を守るため、外交・安全保障や経済成長、社会保障、少子化対策、教育などを長期的にどうしていくのかが伝わってこない。日本の将来像を分かりやすく説明するなかで、税のあり方も説明することが求められているが、それがない。