陸上自衛隊「日野基本射撃場」(岐阜市日野南)で自衛官3人が銃撃されて死傷した事件で、陸自は6日、同射撃場での射撃訓練を再開する。地元では再開に理解を示す声がある一方、懸念の声も根強く、県や市は陸自に丁寧な説明を求めている。(小島駿佑)
事件は6月14日午前9時10分頃に発生した。教官を含む約120人で実弾を使った射撃訓練中、自衛官候補生(当時)の男(18)が同射撃場で小銃を発射し、隊員2人が死亡、1人が重傷を負った。
陸自は事件を受け、全国の部隊で射撃訓練を一時中止にした。翌15日には、隊員の心情や健康状態を確実に把握することなどを条件に順次再開する方針を示したが、同射撃場での訓練は中止のままとしていた。
男は殺人などの容疑で送検され、9月に懲戒免職となった。現在、刑事責任能力の有無を調べる鑑定留置が行われている。
事件発生から4か月余りが経過した10月25日、同射撃場を管理する陸自守山駐屯地(名古屋市)の兵庫剛司令が岐阜市の柴橋正直市長と面会し、隊員の練度維持のためとして射撃訓練を再開する方針を伝えた。翌26日には古田肇知事にも同様の説明をした。
陸自は10月28日、同射撃場近くの日野公民館で自治会関係者を集めて説明会を開いた。自衛官や候補生の教育などの担当者が、出席者約20人に再発防止策などを説明した。
守山駐屯地などによると、再発防止策として、候補生が銃と弾を持つのは射撃位置に限ること、射撃の際は1対1で自衛官が候補生を監視し、弾薬置き場は候補生と離して複数人で監視することなどを示したという。
説明会は報道陣に非公開で行われた。複数の出席者によると、訓練再開に理解を示す声のほか、懸念する意見も複数出たという。出席した40歳代男性は「訓練をしなければ、いざという時に(陸自が)何もできない」と話す。60歳代男性は「また同じような事件が起こるのではないか」と不安を隠さない。
同駐屯地によると、再発防止策の内容は新たに策定したものではないとしている。出席者たちによると、説明会でそうした説明はなかったといい、「新しい対策のように言っている部分もあったが、事件前からやっていることと同じではないか」(60歳代男性)と疑問も出ている。
訓練再開に際し、法的には地元住民や自治体の同意は必要ない。ただ、古田知事は10月31日の定例記者会見で、地域への説明を含めて丁寧な対応をするよう陸自に求めたことを明かした。岐阜市も「懸念の声があるならば丁寧な説明を求めたい」とする。地元住民らでつくる市民団体が近く、住民への説明と再発防止を陸自側に申し入れる予定だ。
同駐屯地は「現時点で追加の説明会の予定はないが、広報に問い合わせをいただければ個別に説明する」としている。
◆陸自が示した再発防止策の例
・候補生が銃と弾を持つのは射撃位置に限定することを徹底
・射撃の際は候補生1人に対して自衛官1人が監視
・弾薬置き場は、候補生と一定の距離を離すか鉄条網で覆うなどして複数人で監視
・規律心の教育を徹底
・教官とともに補助者として別の自衛官が不審な素行を監視