親類17人犠牲、友人連絡取れず… 日本国内のガザ出身者、悲痛な声

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘激化から1カ月を迎えた。イスラエル軍の激しい攻撃で民間人の被害が拡大し、京都で暮らすパレスチナ人たちが胸を痛めている。現地の家族や友人らが爆撃で次々と犠牲になっており、「即時停戦を」「国際社会は見殺しにしないで」と悲痛な声を上げている。【千葉紀和】
「私の故郷は様変わりしてしまった。思い出の場所も、お気に入りのパン屋も空爆され、全てがれきになった」
ガザ地区で生まれ育ったムハンマド・ハジャジさん(37)は、現地からの報道や地元の友人らがSNS(ネット交流サービス)で連日伝える動画を見つめながら肩を落とした。
日本のアニメが好きで2016年に来日し、同志社大大学院で工学の博士号を取得。現在は京都市内の企業でITエンジニアとして働いている。20代まで過ごした地元で続く攻撃に、親しい人々の安否を気遣う毎日だ。
「複数のいとこが住むアパートが爆撃され、女の子2人を含む親類17人が犠牲になった。友達の多くは連絡が取れず、何人が死んだのかすら分からない」
両親が暮らすアパートもすぐ近くにあり、攻撃の一報があるたびに次は実家が被弾するのではと不安が募る。爆撃は最寄りの病院やモスク、大学のほか、太陽光発電装置などインフラ施設にも及び、食料も飲用水も底をつきかけているという。
ハジャジさんは「民間人を無差別に攻撃するだけでなく、息の根を止めるようにライフラインを攻撃している。なぜこんな行為が許されるのか。世界は即時停戦に向けて動いてほしい」と訴える。
イスラム組織ハマスとイスラエル軍の軍事衝突から7日で1カ月。ガザ地区の保健当局は地区内の死者が1万人を超え、うち4割超が子どもだと発表した。一方、イスラエル側の死者も約1400人に上っている。
京都大で電気工学を研究するパレスチナ人のディーブ・アルアシュガルさん(33)は、ガザで暮らす兄の妻とその家族が爆撃で死亡した。「兄の息子は生後2カ月だった。こんな小さな子に何の罪があるのか」と憤る。
一刻も早い停戦の実現に向け、日本をはじめとする国際社会の行動に期待しているが、国連総会の緊急特別会合で採択された人道目的での休戦などを求める決議に日本が棄権したことに「失望した」と表情を曇らせる。
京大で免疫学などを研究するジュマーナ・カリルさん(31)も日本の役割に期待を寄せる。「イスラエルともアラブ諸国とも関係の良い日本こそ停戦に向け積極的に動いてほしい」。ガザに住むおじは、空爆で家を失った住民約80人を自宅で受け入れていたが、2週間前から連絡が取れず心配しているという。
4日夜には、即時停戦を求めるデモ行進が京都市の繁華街であった。学生やアラブ系の人々を中心に約200人が集まり、市役所前や四条河原町の交差点などで「子どもを殺すな」「ジェノサイド(大量虐殺)はやめろ」などと声を上げた。
デモには、パレスチナ問題の発信を長年続けてきた早稲田大の岡真理教授(アラブ現代文学)=京都市左京区=も参加。「『暴力の連鎖』などと報じられているが、国際法などを守らず占領を続ける者と占領下にいる人は対等ではない。国家によるジェノサイドと、抵抗のための暴力を同一視すること自体が暴力だ」と語り、早期停戦を訴えた。