年内の衆院解散、岸田首相が見送りで調整…内閣支持率の低迷踏まえ経済の立て直しに専念

岸田首相(自民党総裁)は、年内の衆院解散・総選挙を見送る方向で調整に入った。内閣支持率の低迷を踏まえ、最重要課題に位置づける経済の立て直しに当面は専念し、信頼回復に努める。来年9月の任期満了に伴う党総裁選の前に解散に打って出る環境を整えたい考えだ。
首相は、複数の与党幹部に対し、経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案の早期成立や経済対策の実施に「集中したい」との考えを伝えた。
今月下旬が見込まれる補正の成立後、すぐに解散する余地も残されているが、首相は国民の関心は物価高問題への対応にあり、解散で政治空白を生じさせることは理解を得られないとの判断に傾いた。政権浮揚を狙った所得税などの減税が評価されていないことも考慮したとみられる。
首相は2日の記者会見では、衆院解散に関し、「今は先送りできない課題に一意専心に取り組む」と強調していた。
窮屈な政治日程も首相の見送り判断を後押ししたようだ。首相は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討している。
11月末以降の解散の場合、12月17日か同24日の投開票が有力となるが、同16~18日には、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が東京で開かれる。首相は会議に合わせ、アジア地域の脱炭素化を進める「アジア・ゼロエミッション共同体」(AZEC)の首脳会合も行う予定だ。
この時期に選挙も行えば、24年度予算の年内編成が困難になり、経済最優先とする政権の姿勢との整合性が問われかねない。
今後の解散のタイミングとしては、24年度予算の成立後の来春以降が有力な選択肢となる。自民党内では、「支持率回復には相当の時間が必要だ」との見方が多い。首相は賃上げを実現したうえで、再選を期す総裁選前に衆院選で勝利し、総裁選を無風で乗り切る戦略を軸に、解散時期を見極める意向だ。現在の衆院議員は25年10月30日に任期満了を迎える。