一カ国でも多く参加して… 「撤退ドミノ」警戒強める万博協会

2025年大阪・関西万博に出展予定だったメキシコなど複数の国が、万博から撤退する意向を日本側に伝えたことが明らかになった。「開幕500日前」となる30日に前売り券の販売開始を控え、日本国際博覧会協会(万博協会)は、これらに続く国が出ないか警戒を強めている。一方、協会が発注を代行する簡易型パビリオン「タイプX」の需要急増に備え、正式に移行を決めた2カ国分だけでなく、計25カ国分を業者に先行発注していることも判明した。
「一カ国でも(多く)参加表明している国に参加してもらいたい」。大阪府の吉村洋文知事は10日、府庁で報道陣からメキシコなどが撤退の意向を示したことの影響を問われると、言葉少なに語った。
メキシコを含めた60カ国が当初、タイプAを希望したが、資材高騰や人手不足から建設業者との契約は難航。焦った協会は7月に複数の支援策を提示した。8月には工期短縮の「切り札」として、協会がプレハブ方式で建てた簡易施設を引き渡し、内外装を施してもらうタイプXを新たに提案。国も専従の支援チームを編成して、対応に当たってきた。
しかし、11月になっても建設業者と契約できたのは24カ国だけで、会場の夢洲(ゆめしま)がある大阪市からパビリオン建設に必要な「仮設建築物許可」を取得したのは10日現在、チェコ、モナコ、ベルギー、ルクセンブルクの4カ国のみ。正式にXへの移行を決めたのはアンゴラとブラジルの2カ国だけで、ブラジルは移行理由について「コストの高騰や納期などを考慮した」と説明している。
協会幹部は10日、このタイプXについて、2カ国分を大幅に上回る計25カ国分を業者に先行発注していると明らかにした。協会は「各国事情」に配慮して、Xへの移行期限を明確にしていない。建設業者が決まっていない約30カ国のXへの移行決定が遅れた場合、資材調達が間に合わず出展を取りやめる事態に陥らないよう、先手を打った形だ。幹部は「その段階で発注して『間に合いませんでした』では困るので、先のことも含めて準備のお願いをしている」と意図を明かす。
タイプXの建設費用は協会がいったん立て替えるが最終的には参加国が負担するため、会場建設費には含まれていない。先行発注したもののパビリオンとして使わなかった場合について、協会幹部は「Xは汎用(はんよう)性が高く、使い道はそれなりにある」と語り、物販施設など別の用途に変える考えを示した。【高木香奈、藤河匠】