杜撰さと強引さが“博覧会”状態に…大阪万博を通して見る、維新流「身を切る改革」のヤバさとは?

先週は「寄付」に関する両極端なニュースがあった。まずこちら。
『大谷翔平 日本国内すべての小学校に約6万個のグローブ寄贈へ』(NHKニュース11月9日)
すごい。おカネはどれぐらいかかるのか?
《製造にかかる費用などは非公表だが、通常、ジュニアサイズの軟式用グラブは1万円前後で売られている。単純計算でも約6億円はかかるとみられる》(日刊スポーツ11月9日)
素晴らしい。一方、ほぼ同じ頃にこの記事も話題になった。
『阪神・オリックス優勝パレード 教職員に大阪府 ネット募金要求 「寄付で評価?」組合懸念』(しんぶん赤旗11月9日)
23日に大阪市と神戸市で予定されているプロ野球阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝記念パレードの開催費用を集めるため、大阪府が府立学校の校長・准校長に、教職員がクラウドファンディング(CF)に協力するよう事務連絡を出したことがわかったのだ。
申し込みは「勤務時間外に」
寄付額は「3000円以上」で、申し込みは「勤務時間外に行ってください」という。勤務時間外をわざわざ指定するのは大阪府も呼びかけが問題だと認識しているがゆえでは、との関係者の声も記事にある。
大阪府はパレード開催のため警備費、交通規制告知などに5億円かかると説明。しかし集まりが悪いから教職員に協力を「求めている」らしい。
大阪教職員組合の担当者は、
「学校教育に全く関係がない。『寄付をしろ』とは書いていないが、無言の圧力になりうる」
と批判する(東京新聞11月11日)。
寄付(寄贈)を自主的に行った大谷翔平と、上から「お願い」されている大阪の教職員。この差はわかりやすい。
「維新流」のヤバさ
さらに、大阪府と市は、パレードの現地で来場者の誘導などを担う要員として各1500人のボランティアも募っていた。
『勤労感謝の日に職員3000人を7時間タダ働きさせようとする大阪府・大阪市のヤバさ これが「維新流」?』(東京新聞11月9日)
府市トップの所属はいずれも維新だが、大阪在住のジャーナリスト吉富有治氏は、
「もともと維新は大阪府市を統合する大阪都構想が党是。その中で『税金の無駄遣いをなくす』ことや『コストカット』を言い続けてきた。根本に『公務員は働かせてナンボ』という考え方がある」
と解説。
朝日新聞の「素粒子」(11月10日)には、
《ただ働きさせ、身銭も切らせ。パレード問題が映す維新流「身を切る改革」。従わなければどんな不利益をこうむるか、警戒するのも当然で。》
と書かれていた。
「身を切る改革」はどこへ?
「身を切る改革」を訴えている維新だが、気になるのは維新が熱心に招致を呼びかけた大阪万博だ。現状は『万博、費用膨張なし崩し』(毎日新聞10月21日)と、会場建設費が当初の計画よりほぼ倍に膨らむことになっている。万博のおカネは別なのだろうか?
今回の阪神とオリックスのパレードの資金集めも、実は万博を前面に押し出していた。
《9月下旬の発表では、名前が「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』~2025年大阪・関西万博500日前!~」と、なぜか無関係の万博が盛りこまれていたため炎上。》(中日スポーツ10月18日)
炎上したのは万博の建設費用が当初の計画より高騰し、批判が高まっていることが背景にあると書かれている。その万博にはパビリオンの建設遅れという問題もある。産経新聞は先週末に次の記事を報じた。
『<独自>メキシコが万博撤退の意向 参加表明国で初めて 予算などの問題で』(11月10日)
パビリオンを出展して参加することを公式表明していたメキシコが、撤退の意向を関係者に伝えたという。メキシコは自前で設計・建設する「タイプA」を出展する予定だったが、来年6月に大統領選挙が計画されており、再来年開催の万博への出展に必要な予算措置が不透明な状況になっているためという。
万博協会が始めた「見切り発車」
ちなみにパビリオンには、各国が費用を負担して独自に建てる「タイプA」、万博協会が建てた施設を引き渡す「タイプB」、建物の一部区画を貸す「タイプC」、万博協会がプレハブ工法で箱形の建物を建てて引き渡す「タイプX」の4種類ある。
その上で、朝日新聞の記事には恐ろしいことが書いてあった。
《万博協会は、「タイプX」を見越した「見切り発車」を始めた。首相周辺は約20カ国分を仮発注したことを明かし、「もし使われなかったら休憩所とかに使う」と話した。費用は日本が立て替えるが、使われなければ日本の負担になる。》(11月11日)
み、見切り発車ってギャンブルじゃないか。万博はもうカジノなのか!?
杜撰さと強引さが「博覧会」状態
さらに産経新聞は12日のオピニオン欄で『万博建設費 さらなる増額は』と特集を組んだ。吉村知事の『コスト管理徹底 3度目なし』という意見を載せる一方、『自助どこへ 維新この程度か』という岡田克也立憲民主党幹事長の言葉も載せていた。岡田氏曰く混乱の要因は万博協会にあるが、国や大阪府・市、経済界が協会側に丸投げしているようにも見えると。そして、
《万博には多くの税金が投じられており、コストに見合っているのかの検証が必要だ。維新が掲げる「身を切る改革」はこの程度なのかと思ってしまう。》
こうしてみると他人の身を切ることには厳しい維新だが、万博を通すと杜撰さと強引さが「博覧会」状態になるのである。
国や大阪府・市はこれから万博をなんとか開催に導いて結果オーライを目指すだろう。しかし今の時点で「博覧」されているこの過程こそよく見ておくことが重要ではないか? いろんなものが可視化されているからだ。万博はやはり面白い。
(プチ鹿島)