「やけどさされた」「ちゃいろになってる」転落死したタカラジェンヌの“悲痛LINE”を無視した“宝塚報告書”3つの問題点 現役宙組生は「私の訴えはもみ消された」

〈 「強烈なパワハラを上級生から受けていた」タカラジェンヌ転落事件”遺族の訴えを全文公開「(宝塚は)捏造隠蔽を繰り返した」「娘の笑顔が大好きでした」《遺族代理人が会見》 〉から続く
9月30日に宝塚歌劇団の有愛きい(25)が亡くなった事件。11月14日に開かれた歌劇団の会見が大きな波紋を広げている。『 週刊文春 』宝塚問題取材班の記者は会見をどうみたのか――。
「ヘアアイロン事件」は天彩による故意か、過失か
劇団会見の同日、遺族側の代理人弁護士も会見を開き、上級生による有愛へのパワハラをめぐる見解が真っ向から対立していることが明るみに出た。つぶさに会見を見ると、「3つの違和感」が浮かび上がってきた。
まず、「ヘアアイロン事件」をめぐる見解だ。会見で公表された外部弁護士による調査チームの報告書には〈故人に関する文春報道〉と題した項目を設け調査結果を示している。これは小誌2月9日号「 宝塚イシメ新疑惑 ヘアアイロンて後輩の顔をヤケトさせたトッフ娘役候補 」と題した記事のことである。
上級生である天彩峰里(あまいろみねり)が、有愛に「舞台での前髪の作り方を教えてあげる」と、高温のヘアアイロンを額に押し付け、その結果、有愛が火傷を負った事実を詳報した。報告書では、看護師やプロデューサーの供述として「ヘアアイロンによるやけどはよくある」と記し、天彩による故意か過失か、「どちらが事実であるかを判断することは困難である」とした。
現場に居合わせた現役の宙組生徒の証言
だが、遺族側の川人博弁護士は会見で、「調査委員会に提出した、本人のLINE等重要な証拠を無視している」と反論。有愛のLINEには母親に宛てた悲痛の訴えが遺されていたという。
〈〇〇(天彩のこと)に(前髪を)まかれて〉
〈やけどさされた(原文ママ)〉
〈ちゃいろになっている〉
〈でこ〉〈さいあく〉
小誌は現場に居合わせた現役の宙組生徒から次のような証言を得ている。
「あまりに痛々しかったので、たくさんの生徒が心配して集まり、『どうしたんですか』と声を掛けていました。有愛さんは涙を堪えて『自分でアイロンをすると言ったのに奪われて、押し当てられた』と。火傷を負わせた天彩さんは、痛がっている有愛さんを部屋に残して退室したそう。彼女はナースが常駐している劇場内の診療所へ塗り薬をもらいに行っていました。数日後、患部は黒ずみ、かさぶたになっていました」
新人公演の準備に追われる中、複数の上級生から苛烈な叱責を…
次に、仮に過失であったとしても、これまで天彩と劇団側から一切謝罪がなかった点だ。川人弁護士は会見でこう指摘していた。
「他人が被災者に対しヘアアイロンを使った特殊性を考慮していない。(天彩が)確定的故意に基づいて行ったものでなくとも、未必の故意があったと評価するのが法的には相当である。俳優が顔に怪我を負うのは、仕事に影響を与える大変な問題です」
そして最後に、死の直前の9月下旬、有愛が新人公演の準備に追われる中、複数の上級生から苛烈な叱責をされていたことについてだ。小誌では10月19日号「 『タカラシェンヌ(25)自殺の真相』宝塚歌劇団は壮絶イシメを8カ月放置した《内部告発続々》 」と題した記事で、トップスターの芹香斗亜や松風輝組長ら上級生が「あんたが下級生をまとめないでどうするんだ!」「マインドが足りない」「この嘘つき野郎」と、有愛を執拗に怒鳴っていたことを、複数の現役宙組生の証言に基づき報じた。
劇団が多数の供述を黙殺
だが、歌劇団の報告書では、上級生の指導について「人格や人間性を否定する内容が含まれるものではない」とし、「社会通念上、許容される範囲だった」と結論づけた。川人弁護士によれば、ここでも、有愛のLINEが調査で引用されていないという。
「被災者は『嘘つき』と人格否定されたことを、LINEで述べている。劇団は彼女が訴えたことを全て否認しています」(同前)
黙殺された供述はこれだけではない。報告書では〈ヒアリングでは、この時組長が故人に対して「やる気がない」と言って怒った、という者も複数名いたが、すべて伝聞であり、そのような発言があったとは認定できなかった〉とした。
「この期に及んで劇団はまだ隠蔽しています」
調査を受けた現役宙組生が憤り、小誌記者に次のようなメッセージを寄せた。
「上級生が有愛さんをはじめ、私たち下級生に対して行った、数々のパワハラを調査委員会で証言しました。ですが、私の訴えは劇団にもみ消された。この期に及んで劇団はまだ隠蔽しています」
11月15日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および11月16日(木)発売の「週刊文春」では、現役生たちが告発する、報告書に載らなかった有愛への壮絶なイジメやパワハラの実態に加え、有愛の同期生の決死の告発、イジメ主犯格の近況について6ページにわたって詳報している。
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今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス: https://bunshun.jp/list/leaks
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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
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(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年11月23日号)