青森市が発注した新型コロナウイルス患者の移送業務を巡る入札で談合した疑いがあるとして、公正取引委員会は15日午前、近畿日本ツーリスト(東京)など国内の旅行会社5社の青森支店などに対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査を始めた。新型コロナ関連の事業を巡り、公取委が同法違反容疑で調査を行うのは初めて。
立ち入り検査の対象はほかに、JTB、東武トップツアーズ(いずれも東京)、日本旅行東北(仙台市)、名鉄観光サービス(名古屋市)の青森支店。岩手、福島両県の関係先を含め、計9か所を調査している。
同市が発注した移送業務は、移動手段がなかったり、体調が優れなかったりする比較的軽症の患者を医療機関や宿泊療養施設へ運ぶもの。2022年3月1日から今年5月7日まで実施された。
当初の2か月は近ツーの青森支店が計約680万円で随意契約していたが、その後、1契約当たり1~4か月の期間で指名競争入札が実施された。22年4月から23年3月に行われた計5回の入札には近ツー、JTB、日本旅行東北の各青森支店が参加し、いずれも近ツーが落札。落札金額は計約3230万円だった。
関係者によると、各社の支店長らは入札前に連絡を取り合い、入札金額などを調整。近ツーが落札した上で、車内の感染対策や運転手の確保などをほかの4社に再委託する合意をしていた疑いがある。コロナで旅行需要が落ち込む中、談合によって各社が安定した利益の確保を図った可能性もある。
近畿日本ツーリストは取材に対し、「立ち入り検査を受けているのは事実。公取委の調査に全面的に協力していく」と答えた。