国会議員は、「選良」とも呼ばれる。「選ばれた優れた人」という意味だ。だが、実際の選挙では、必ずしも「能力的にも人格的にも優れた人」が選び出されるとは限らない。大臣や副大臣、政務官など、役職の任命もそうだ。
第二次岸田文雄再改造内閣で辞任ドミノが起きている。
文科政務官だった山田太郎氏は、若い女性との不適切な関係を週刊誌に報じられて辞任した。法務副大臣だった柿沢未途氏も、木村弥生江東区長(15日付の辞職を表明)陣営が選挙期間中、有料広告をネット配信した公職選挙法違反事件に絡み、辞任した。
さらに、神田憲次財務副大臣にも不祥事だ。税金未納により、4度にわたって自社ビルを差し押さえられたことを週刊誌に暴露され、本人もその事実を認め、辞任した。
神田氏は、9日の参院財政金融委員会で「議員の職務が多忙になる中で、(納税を督促する)郵便物を見るのが遅れた」と弁明したが、釈明としては厳しいものがある。
秘書へのパワハラも指摘されている。神田氏の国会事務所、さらに地元事務所からも秘書が身を引き、「神田事務所には秘書がゼロ」の状態になった時期もあったという。
来客対応も印象的だった。議員会館の神田事務所には、「ノート」が置いてあり、来客は事務所に来た「日時」と「用件」を書き込むよう求められた。これだけ情報管理に厳格なのに、重要な納税の期限は見逃したということか。
国会で野党から厳しく追及された神田氏は「職責を全うしたい」と財務副大臣の辞任を否定した。さらに、内閣改造で「適材適所」と胸を張った岸田首相は、進退の結論を先送りし、さらに国民の怒りを買ってしまった。
税理士資格を持ちながら4度も税を滞納する人物に、財務副大臣は適任だったのか。政治家としての責任をどう考えるのか。ジリ貧の内閣支持率であえぐ岸田内閣の足を、さらに引っ張る形となった。
2012年に民主党から政権を奪還して以来、自民党は10年以上、一強体制を維持し、「わが世の春」を謳歌(おうか)してきた。
だが、世論調査が示す数字は、「春」が過ぎ去ったことを示している。いよいよ「淘汰(とうた)の冬」が始まった様相だ。その厳寒の中で生き残れるのは「本物の選良」のみに違いない。
神田氏も12年の衆院選で初当選した。早晩、「国民の信」は問われる。神田氏に限らず、「春」の恩恵を享受した自民党議員たちは、どのような〝成果〟を残したのか、厳しく問われることになる。 (政治ジャーナリスト)