札幌市西区で走行中の軽乗用車のタイヤが外れて女児にぶつかった事故で、軽乗用車の左前輪部のタイヤを取り付けていた部品が全て外れていたことが15日、北海道警への取材で判明した。直前には自動車運転処罰法違反(過失致傷)で逮捕された同区の会社員、若本豊嗣容疑者(49)とみられる人物がタイヤの状態を確認するような行動をとっていたことも判明。道警はナットが緩んでタイヤが外れた可能性があるとみて、事故原因を調べている。【金将来、後藤佳怜】
事故は14日午後1時35分ごろ、札幌市西区平和3の8の市道で発生。走行中の軽乗用車の左前のオフロード走行用タイヤ(16インチ)が外れて約70メートル転がり、父親と姉と3人で歩道を歩いていた同区平和3の10の幼稚園児の女児(4)に直撃した。女児は意識不明の重体。道警によると、事故現場ではタイヤを取り付けていたとみられるナット5本が見つかったという。また、車の名義は若本容疑者とは別人だった。
毎日新聞が入手した防犯カメラの映像には、事故直前に、若本容疑者とみられる人物が現場近くの他人の敷地内で、車をゆっくり旋回させ左右の前輪を確認する様子が映っていた。目撃した敷地所有者の男性(61)は「マフラーをふかすような大きな音がしたので、窓からのぞくと白い車が入ってきた。3度旋回した後、車を降りて前輪をのぞき込むように確認していた」と話しており、道警は、若本容疑者の事故前の足取りも含めて詳しく調べている。
現場は片側1車線の坂道で、幼稚園や小学校が並ぶ通園・通学路。近くの幼稚園に4歳の娘を通わせる女性は「事故を知り、驚いたし怖いと思った。この道は車通りも多く、子供と手をつなぐなど気を付けているが、急に坂の上からタイヤが転がってくると防ぎきれない」と不安げに話した。
タイヤ交換、緩みに注意
事故を起こした軽乗用車は、通常よりも大きなタイヤを取り付けていたとみられ、車体やタイヤの形状などから改造車の可能性も浮上。専門家からはタイヤ交換後の確認不足が脱落事故につながる危険性を指摘する声も上がった。脱落事故はタイヤ交換が行われる11~3月に多く発生しており、日本自動車連盟(JAF)札幌支部は安全な交換作業の徹底を呼びかけている。
道警のまとめによると、2013~22年に道内で発生したタイヤの脱落による人身事故は計10件(負傷者11人、死者0人)に上る。
JAF札幌支部の担当者によると、タイヤが外れる最も多い原因は、交換時のボルトやナットの締め付けの緩さや付け忘れだという。特に、自宅などでタイヤをセルフ交換した車にそうしたトラブルが多い。担当者は「締め付け具合を測定する『トルクレンチ』という精密機器もホームセンターなどで数千円で買えるので活用してほしい」と勧める。
一方で、トルクレンチのような精密機器がない場合は、十分な締め付けがされているのか判断するのは難しい。担当者は「ボルトやナットが緩んだ状態で走行すると『カタカタ』や『ゴトゴト』といった音がする。それもタイヤが外れる一つの前兆だ」と話す。その上で「締め付ける力に不安がある方や高齢者はできるだけ業者に頼むことを推奨するが、それができない場合は交換後、すぐに点検をするようにしてほしい」と呼びかけた。