日本経済はコロナ禍や物価高の悪影響から十分に脱出できていない。最近、公表された今年7~9月期の国内総生産(GDP)速報をみても、相変わらず消費を中心に内需が弱いままだ。そのため海外との取引によってGDPは時にはプラス成長になり、あるいは今回のようにマイナス成長になってしまい、内需主導の安定的な成長軌道に乗ることができない。政府や日本銀行の積極的な支援が必要になる。
こんな誰にも明白なことが分からないのが、自民党の税制調査会と財務省のコンビである。党税調と財務省は、増税・負担増で日本経済を不景気のまま冷却するのが目的である。
こう書くと財務省陰謀論のように聞こえるかもしれないが、私はラジオ番組でいま党税調の中でも「インナー」といわれる〝幹部〟の国会議員から「景気が良くなるのを待つと増税できなくなる」と直接聞いたことがある。景気が良くなると税収が増えるので、増税や負担増が先送りになるのを嫌っているのだろう。実際に、税収増を受けて防衛増税は先送りになっている。これ自体はいいことだが、党税調や財務省のような〝緊縮脳〟にとっては全力で避けたい悪夢だろう。
自民党税制調査会は、日本の税制を決めている組織だ。そのトップは宮沢洋一会長で、財務省出身であり、岸田文雄首相のいとこでもある。その党税調が24年度税制改正の議論を開始した。もちろんできるだけ緊縮する方針だろう。マスコミを利用して「財政再建」という美名で、緊縮が必要だという宣伝工作も行う。財務省から流れた資料を、公表前に「財政再建」が大好きなマスコミに流して、タイミングよく報道してもらう。そのためかどうかは分からないが、日本のマスコミは緊縮財政派が本当に多い。
最近では、賃上げした企業の法人税を減税する「賃上げ税制」の財源を緊縮しようと自民税調と財務省は狙っている。賃上げ税制の結果、法人税が5000億円ほど減少したため、来年度は減税の恩恵を受ける企業を減らす方針だ。
筆者も、賃上げ税制という企業個別のミクロの政策に、日本経済全体というマクロの景気浮揚の効果を求めるのは難しいと思っている。むしろ減税をするならば消費減税だ。
だが自民税調と財務省は単に予算を削減したいだけなのだ。賃上げ税制にはさほど効果はないだろうが、それを止めれば賃上げの社会的機運に水を差すだろう。政治的に筋が悪い。そもそも法人税総額は増えているのだ。
マクロな景気対策では、党税調も財務省も、しょぼくて遅い予算を目指している。日本の復活のためには、党税調の幹部らが有権者の厳しい審判を受けるぐらいのことが必要かもしれない。 (上武大学教授・田中秀臣)