消費税率が1日、8%から10%に引き上げられた。飲食料品(外食・酒類を除く)の税率を8%に据え置く軽減税率や、キャッシュレス決済へのポイント還元など新たな制度も導入。東海地方の鉄道各社や飲食店などは対応に追われ、消費者からは「ややこしい時代になった」と戸惑いの声が聞かれた一方、「2%の増税は気にならない」と受け止める客の姿もあった。【黒尾透、大野友嘉子、河部修志】
JR東海は1日未明、管内の計396駅で運賃表を取り換えた。このうち名古屋駅では、コンコース内にある中央改札口近くの切符券売機上の運賃表が、終電後の午前0時15分から作業員たちによって手際よく取り換えられた。今回の運賃改定で、初乗り運賃と入場券は同社が発足した1987年以来、初めて10円上げて150円になった。
飲食施設では軽減税率への対応が分かれるところも。名古屋市千種区の東山動植物園内には、飲食を提供する複数の店がある。このうち、きしめんやピザなどを販売する店が入る飲食スペース「ゾアシス」は、店内外どちらで食べても同じ料金にした。
一方、カレーライスなどを提供する「カフェ ノースガーデン」は店外のベンチなどで飲食する場合の税率は8%、店内は10%と決め、販売する際に客に確認している。また、カフェ「メゾン・ド・ヴェール」は、外で食べると自己申告があった場合を除いて一律10%とした。
店内外とも同じ料金の店で1歳のおいと食事をしていた同市名東区の会社員、西村有里菜さん(24)は「今日は外が暑く、小さな子どもと一緒だったので屋内に入った。同じ値段なら気軽に中で食べようと思える」。家族で訪れた同市港区の会社員、渡辺悟さん(35)は「2%しか変わらないのでそれほど気にならないが、店によってルールが異なると混乱する」と戸惑った様子だった。
喫茶店のモーニングサービス発祥の地とされる愛知県一宮市。中心部の商店街にある「喫茶ナポリ」は、モーニングサービス付きのコーヒー350円を380円に値上げした。
創業53年。2代目の松本靖さん(57)は「税込み価格を30円上げても、年々上がる原材料費に追いつかない」、店を切り盛りする妻正子さん(57)は「お客さんの顔が思い浮かび、忍びなかった」と話した。
少しでもポイント還元ができればと、思い切ってキャッシュレス決済を導入した。スマートフォンでコーヒーチケットを購入した常連客の男性(78)は「30円の値上げなら仕方ない」。毎週1回は訪れるという女性(76)は「年金は上がらず、消費税は10%が限界。軽減税率もややこしく、暮らしにくい時代になった」とため息をついた。