子どもの成長を支える場でありながら、ブラック労働環境が問題視されている学校現場。ニュースなどでも盛んに取り上げられているテーマではありますが、実際に働いている教員は、どのような思いを抱いているのでしょうか。
本記事は、公立校の中学教員であるAさん(仮名)に「1人の一般教員として感じている“学校の労働環境の問題点”」を語ってもらう連載企画となります。
●部活動を長時間するために“規制逃れ”をする教員たち
―― 「部活動の活動時間を制限することが教員の働き方改革につながる」という考え方には否定的だったよね。どうして?
この問題については、いろいろと思うところがあって。今回は、俺の知ってる範囲で運動部の“規制逃れ”の実態について話そうか。
2018年、スポーツ庁が「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を作った。それなりに長いんだけど、今回ポイントになるのは「平日の部活は2時間、3時間程度にしよう」「1週間のうち2日間は休養日にして、土日のどちらかは休みにしよう」という内容。
要は、活動時間に関する規制が含まれてるわけ。俺が働いてる自治体でも、これをおおむね踏襲したガイドラインが作られたんだけど、部活が大好きな教員たちから反発があった。活動時間を減らすなんて嫌だ、というわけだ。
ガイドラインは法律じゃないから、守らなくても問題ないと言えば問題ないんだけど、各教育委員会が「いやいや、ここは守りましょうよ」とストップを掛けた。その結果、学校では「ガイドラインに抵触しないように、長時間部活をやろう」という動きが起こった。
―― そこまでして部活をやりたいのか……
うちの自治体のガイドラインはスポーツ庁よりも一部緩くなっていて、「大会2週間前は活動時間を延長していい」ことになってる。だから、新しい大会を作る教員たちが現れた。大会といっても、近隣の学校で集まって試合して表彰状を出すくらいの小規模なものなんだけど。
―― それがアリなら極端な話、2週間おきに大会(という名の他校との練習試合)をするだけで“規制逃れ”できるのでは?
そういうことになっちゃうよね。だから、ガイドラインには「活動時間規制が免除されるのはこの大会、この大会……」と明記されることになり、この抜け道はふさがれた。
でも、こういうのって結局のところ、イタチごっこになっちゃうんだよね。
●「部活に熱心な先生は皆、『闇部活』をやってる」
ガイドラインは部活に関するもの。逆手に取ると、活動内容は部活と変わらなくても「これは部活ではない」という体裁にすれば、ガイドラインの適用外になるはずだよね。
こういう手法は「闇部活」と呼ばれていて、少なくとも俺の都道府県で流行ってるのは「社会教育団体」を利用したやり方。
―― 社会教育団体って?
一般市民の健康増進、生涯学習などを目的とした団体なんだけど、この話で重要なのは「学校とは関係のない団体」ということ。
立ち上げた社会教育団体に部員たちを所属させ、顧問がボランティアの指導者として入ると“部活をコピーした団体”が作れるわけだけど、学校とは関係がないことになってるから、教育委員会は活動に関与できない。
つまり、ガイドラインを気にしなくていいことになる。例えば、「土日のどちらかは休み」という規制に関しては「土曜日は部としての活動、日曜日は社会教育団体としての活動」ということにすればクリアできる。
―― でも、それかなり大変そうじゃない? 団体の立ち上げとか、学校と無関係ならどうやって練習場所を探すのかとか……
そうでもないみたいだよ。社会教育団体は一般市民のためのものだから、どこの市町村でも簡単に作れる。また、学校も一般市民にグラウンドや体育館を貸し出してるところが多いんだよね。
極端な例だと「強豪なのに、16時半くらいには活動が終わってしまう運動部」を知ってる。6時間目まで授業があるとほとんど何もできないくらい短い練習時間で、最初はどうして強いのか分からなかっんだけど、部活終了後、近くの小学校の体育館で毎日夜中まで練習しているらしい。
つまり、メインの練習はガイドラインでは許可されていない長時間練習で、“社会教育団体として”行っていたというわけ。そりゃあ強いわけだよ。“部としての練習時間”がちょっとだけあるのは、教員の退勤時間(16時45分)を待つためじゃないかな。
俺の知る限り、部活に熱心な先生は皆こんな風に闇部活をやってるよ。教員のあいだでは「社会教育団体を持たない部活はやる気がない」という認識が広まっているくらい。
―― 教員がそんな“脱法行為”みたいなことをしていても、保護者は何も言わないの?
学校には「生徒のため」という魔法の言葉があってね。「ガイドラインを無視して平日は夜中まで、土日も休みなしで部活をします。なぜなら、県大会で優勝させるのが生徒のためだから」みたいに言うと、口出しされなくなるんだよ。
(続く)
※本企画は、1人の現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境は自治体、学校などによって異なる可能性があります。