「写真なんか撮っとらんと焼きたて、はよ食べ」 秋冬限定“天然たい焼き”店 ラストシーズン

“天然たい焼き”が焼き上がる香ばしい匂いがふわり。今年も伊勢路に初秋の訪れを告げる。三重県伊勢市吹上で10~3月の秋冬限定で営業する老舗たい焼き専門店、日吉屋が1日、今年も営業を開始した。地元から長く愛されてきた店だが、今シーズンで廃業という。来年3月末までラストランとなる。【尾崎稔裕】
長さ148ミリ、高さ75ミリ、重さ100グラム。1匹150円(税込み)。北海道産アズキを丁寧に炊きあげた自家製つぶあんが、かりっと焼き上げた薄皮のしっぽまで詰まる。
一部のたい焼きファンは、焼き型で1匹ずつ丁寧に焼き上げるタイプを「天然もの」、1枚の鉄板に複数の型を施した焼き型を使用するタイプを「養殖もの」と呼ぶ。日吉屋では35歳で両親から店と味を受け継いだ「おかあさん」と呼ばれる女性店主(75)が、はさみの先端に焼き型がついた「一丁焼き」と呼ばれる約2キロの鉄製用具7丁を使って1匹ずつ焼く。
「増税の影響なんかな。原料の値は軒並み上がって和菓子屋さんは、みんな苦しいわ。ウチは今回で営業は最後やし、お礼の気持ちを込めて値段は据え置きでやらしてもらうでな」と、おかあさん。営業開始を待ちわびた常連が次々に訪れる。「いま食べるんか? 写真なんか撮っとらんと焼きたて、はよ食べ。あ、シッポから食べてな」。焼き皮のパリ感から味わうのが日吉屋流の作法だ。
「天然もの」の名付け親で、全国のたい焼きの名店を紹介する著書「たい焼きの魚拓」のある30年来の同店常連、写真家の宮嶋康彦さん(68)は「一言で言えば間違いなく日本一のたい焼き。もう、それしかいえません。今シーズンも食べに行きます」と話していた。
注文の電話予約は受け付けていない。住所は伊勢市吹上1の7。定休日は不定。