京都府警は27日、京都アニメーションの放火殺人事件で亡くなった35人のうち、これまで身元が公表されていなかった男女25人の実名を明らかにしたのにあわせ、実名公表などについての遺族らの意向も報道陣に説明した。
遺族感情に配慮してきた府警のこれまでの対応を踏襲したものだ。事件発生から約40日を経て犠牲者全員の身元が公表されるという異例の事態となったのも、一連の対応の結果といえる。
京都府警の西山亮二捜査1課長は27日、「大変凄惨(せいさん)な事件で、罪もない多数の方が被害にあわれた。関係者の精神的ショックも極めて大きいことから、ご遺族などの関係者が、犠牲者の死を受け入れるまでに時間がかかっている」と述べ、遺族らの状況に配慮してきたことを強調。また、亡くなった35人の葬儀が27日までに終わったことも、この日の身元公表に至った理由の一つとした。
府警は身元公表について、全犠牲者の遺族に対して取材対応の拒否や実名公表の可否について意見を聴取するなどした。その結果として、報道各社に対し「この遺族は取材対応を拒否している」などと、遺族それぞれの意向を伝えた。
また、実名公表を拒否する遺族もいるとした上で、身元公表に踏み切った理由について「事件の重大性に加え、社会的関心が非常に高く公益性があるため、公表した方がいいと判断した」と説明した。
西山捜査1課長は「ご遺族への説明は尽くしたが、私たちの主観の話。遺族の中には納得できていない人もいる」と話した。
一方、府警からの身元公表を控えるよう要望していた京アニの代理人は同日、「弊社の度重なる要請にかかわらず、本日、被害者の実名が公表されたことは大変遺憾」とのコメントを出した。