宮崎県総合博物館の元副館長で日本植物分類学会員の南谷忠志さん(78)が、県内に自生する植物792種の方言名を集めた「宮崎の植物方言と民俗」を出版した。1978年から約40年かけて県内各地のお年寄りから聞き取ってまとめたもので、南谷さんは「こんな方言があるのかと話題にしてもらえれば」と話している。【斎藤毅】
きっかけは、知人の大学教授から椎葉村の植物の方言名について調査を依頼されたことだった。植物にまつわる言い伝えなどにも興味が広がり、県内各地を回って植物に詳しい人を捜したり、役場や地元区長から紹介してもらったりしながら約300人のお年寄りから聞き取った。ノートに記録した名称を4年前からデータベース化し、今年9月、出版にこぎ着けた。
A4判、270ページで7000円(税別)。県内に自生する野生植物を中心に792種の方言名6077を収録した。50音順に並べた植物の和名ごとに方言名を掲載し、その名が使われている市町村名や地区名も併記した。
調査時にお年寄りが語った植物にまつわる言い伝えや筆者の考察も添えた。どこで、誰が、いつ証言したかが分かるリストもあり、方言名に付記されている自治体や地区名から証言者をたどることもできる。
例えばアケビの項では「アケッポ」「アケブ」などの方言名がずらりと並ぶ。その多さについて「果実が美味(うま)いこともあって極めてなじみ深いので、60語彙(ごい)ほどの方言名がある」と考察し、呼称の由来を推測している。チカラシバの項では「カゼクサ」「シケグサ」などの方言名に加え、葉のしわの数や節のある場所でその年の台風の数や時期を占っていた風習などが記されている。
南谷さんは「調査を始めた40年前でさえ、方言名を答えられたのは60代以上がほとんどだった。このままでは方言が消えていくと思い、本にまとめた」と語る。本は県内の図書館や大学、高校など約70カ所にも寄贈予定。購入などの問い合わせは鉱脈社(0985・25・1758)。