関電、元助役関係会社への発注工事の7割超で事前情報提供

関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領した問題で、森山氏と関係のある建設会社に発注した工事の7割超で森山氏に事前に情報を提供していたことが関電の調査報告書で分かった。担当部署や元請け会社から工事の概算額や工期、発注先などの情報を聞き取り、資料にして森山氏に手渡していた。
関電社内で契約前に工事情報を伝えるという不適切な行為が常態化していたことになり、コンプライアンス(法令順守)意識の欠如が厳しく問われそうだ。
関電の原子力事業本部は平成26年9月~29年末、森山氏が顧問を名乗っていた「吉田開発」(高浜町)に対し、22件の工事を特命随意契約や指名競争入札で発注、そのうち16件で工事情報をまとめた資料などを提供した。さらにゼネコンなどを元請けとする形で91件の工事を間接的に発注し、うち67件でも情報が伝えられていた。
結果的に吉田開発が受注した計113件のうち83件、7割超にのぼる工事で森山氏が事前に概算額などの情報を入手していたことになる。
関電の岩根茂樹社長は2日の会見で「概算額の精度は低く、問題ないという認識だった」と釈明。だが、報告書は契約以前に概算額を示す行為について「情報が吉田開発に渡れば、精度の低い概算額とはいえ、契約交渉に悪影響を与えかねない」などとした。
森山氏は情報提供を受けた日に金品を持参したこともあったが、面談の際に森山氏がかなりの頻度で金品を持ってきていたことから関電側は「情報提供の見返りという認識は持っていなかった」という。
ただ、報告書を取りまとめた調査委員会で委員長を務めた元大阪地検検事正の小林敬弁護士は、森山氏と関電との関係性について「公務員であれば(刑法の)贈収賄罪が成立する可能性がある」と指摘しており、関電側の認識の甘さが改めて浮き彫りになった形だ。