任侠直参実弟が被弾した埼玉銃撃事件の怪

六代目山口組(司忍組長)・髙山清司若頭の出所が間近に迫り、8月、9月と六代目側が被害に遭う事件が相次いで発生した。そんな中、今度は埼玉県で銃声が鳴った。業界内は一時、騒然となり、任侠山口組(織田絆誠組長)を巡る事件としても取り沙汰された。さらに、被害者に合計5発の銃弾を浴びせた冷酷さから、“プロ”による犯行との見方もされたが、事件の被害者は任侠山口組直参の鈴木賴一・二代目川田組組長(東京)の実弟S氏で、組織には属さない人物だった。そのため、なぜ「カタギ」に強い殺意が及んだのかという疑問とともに、不穏さが増したのである。

事件が起きたのは9月29日の午前1時すぎ、埼玉県飯能市美杉台3丁目の路上だった。最寄り駅の西武飯能駅からは徒歩20分で、スーパーやドラッグストアの周囲に分譲住宅などが整然と並ぶ住宅街だ。

深夜に出先から知人女性と戻ったS氏は、建物内に入る前、一時的に単独でその場に留まっていたという。犯人は待ち構えていたのか、その背後に近づき、無言でS氏を銃撃。被弾しながらもS氏が振り向くと、犯人は続けざまに銃弾を浴びせ、倒れ込んだところにもなお銃弾を放った。異変に気付いた知人女性が駆け付け、すぐさま119番通報を入れたことで、S氏は病院へ搬送され、事件が発覚。犯人は拳銃を持ったまま逃走したのである。

「鈴木組長の弟であるS氏は、首付近と背中、腹部、足に計5発の銃弾を受けている。それにもかかわらず一命を取り留め、意識不明の重体に陥ることもなかったそうだから、運が良かったとしか言いようがない。犯行に使われた拳銃の口径が小さかった可能性もあるが、それでも普通、5発も浴びたら無事では済まないだろう」(他団体関係者)

犯人は覆面をして犯行に及んだともいわれ、強い殺意との関係性も囁かれた。

「首付近を狙った上で何発も撃ち込んでいるのだから、殺意はあっただろう。覆面をしていたのは、防犯カメラ対策だけでなく、顔を見られるとマズイ事情でもあったんじゃないか。けどな、弟は会社を経営するカタギだから、撃たれた理由は不明だそうだ。兄の鈴木組長と背格好が似ているから、間違われた可能性もあるが、それにしても鈴木組長にも狙われるようなキナ臭い背景があったとは、今のところ聞いていない」(関東の組織関係者)

ただ、任侠山口組としての“点”は存在するという。

「長野県飯田市で六代目山口組(司忍組長)とのトラブルが続いていただろ。8月20日には三代目弘道会(竹内照明会長=愛知)の野内組傘下三代目近藤組組長が、拉致されて暴行を受ける事件が起き、任侠山口組系組員を含め9人が逮捕監禁致傷容疑で長野県警に逮捕された。鈴木組長の川田組が関わった事件ではないから、今回の埼玉での事件との関連性は薄いと思うが、今くすぶっている火種といえばそれだな」(同)

また、神戸山口組(井上邦雄組長)の中核組織・五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)にも、一部では疑いの目が向けられた。

「鈴木組長は一昨年6月に、山健組傘下の二代目健國会から任侠山口組に移籍して、当時は『健國同志会』を名乗っとった。見せしめいう説を口にする人間もおったけど、今さら山健組がそないなことするかいな」(関西の組織関係者)

8月20日に兵庫県神戸市にある弘道会の関連施設で組員が撃たれ、山健組の犯行説が囁かれる中、9月9日には六代目側・十一代目平井一家(薄葉政嘉総裁=愛知)の本部に発砲が起きていたため、今回の事件でも一部で関与が疑われたようだ。また、個人的トラブルの線も囁かれている。

「兄の鈴木組長は川田組の本拠地を東京に置いているが、生活圏は弟のS氏と同じ地域だったようで、飯能市の地元で何らかのトラブルがあった可能性はゼロではないだろう」(別の関東の組織関係者)

長期服役を覚悟した犯行
反面、ある他団体幹部は「個人的トラブルとするには違和感がある」と話す。

「待ち伏せされていたのだから計画的な犯行で、個人的トラブルならば脅し程度の襲撃だって良かっただろう。それなのに犯人は命を奪いに行っている。今の時代、拳銃を使った事件は、ただでさえ罪が重いのに、身体に弾を入れたとなれば長期服役は避けられない。殺人罪ならば無期懲役だろうし、今回は被害者が生きていたから殺人未遂罪になるが、懲役20年以上は免れないだろう。山一抗争では、敵対組織幹部の親族が狙われた事件もあったくらいだ。今回、犯人はリスクを冒してまで、犯行に及んだのだから事件の闇は案外深いのかもしれん」

しかし、全容解明と同時に、警察当局が危惧する部分もあるという。

「埼玉県警は殺人未遂事件として捜査に乗り出していますが、当事者側はトラブルなど心当たりがないと言っているそうで、事件の背景は謎に包まれています。逮捕者が出て初めて全容が見えてくることになるでしょうから、警察当局は、その際に任侠山口組側がどう動くかも危惧しているようです」(全国紙社会部記者)

三つ巴抗争の渦中で起きた埼玉での銃撃事件は、業界内外に波紋を呼んでいる。

一方、六代目山口組と神戸山口組には、それぞれ法廷闘争も起きており、弘道会・野内正博統括委員長率いる野内組に移籍した二代目北村組・西川純史組長宅への車両特攻事件の初公判が、9月27日、大阪地裁で開かれた。窃盗や建造物損壊などの罪に問われた神戸側・太田興業(太田守正組長=大阪浪速)の北野利樹若頭代行は、知人(同罪で公判中)と共謀して今年1月31日に堺市内の駐車場から逃走用の乗用車を盗み、2月7日未明に大阪市生野区内で盗んだ軽保冷車を同区内にある西川組長宅に突っ込ませたとされる。罪状認否で北野若頭代行は「黙秘します」と答え、弁護人も無罪を主張したのだ。

「検察側は、北村組が野内組に加入したことで、生野区界隈に進出してきたものとして対立意識を募らせたと指摘した。せやけど、北野若頭代行は犯行車両の窃盗現場や犯行現場には行っとらんし、検察側の証拠は実行犯の知人の供述と、事件前後の携帯電話の通話記録しかないんやないか。知人には同罪で懲役6年が求刑されとって間もなく判決が下されるから、それが北野若頭代行の裁判にも影響を及ぼすやろ」(地元記者)

前日の26日には、組員の脱退を妨害したなどとして組織犯罪処罰法違反(組織的監禁)などの罪に問われた六代目山口組・二代目章友会(新井錠士会長=大阪北)の髙橋将道若頭らの公判も、同じ大阪地裁で開かれていた。この日は、同会本部の当番に入っていた男性が証人として出廷。詐欺事件で釈放となり、同会本部で謹慎処分となった被害者であるA元組員について、弁護側から問われると、こう証言した。

「午後7時になると当番責任者から携帯電話が返されたので、Aも彼女に電話するなど自由に使っていた。まったく怯えた様子はなく、『イチから頑張ります』と言っていたのにテキパキと動かず、やる気がないようだったので飛ぶ(逃げ出す)のではないかとは思った。牧有吾本部長(同罪などで公判中)ともそんなことを話したが、見張っておけとは言われなかった」

A元組員は公判で「携帯は取り上げられ、外出時も見張られていたので逃げられなかった」と証言したが、監禁状態にあったとは断定できない可能性が浮上した。新井会長も同罪や傷害の罪に問われており、今回の証言は一貫して無罪を主張する新井会長にとって追い風となりそうだ。