女川再稼働で原発「東西地域差」の解消なるか 福島第1事故の影響、今も色濃く

東北電力女川原発2号機(宮城県)が29日、13年ぶりに再稼働した。日本の原発稼働は西日本に偏重するいびつな状況が続き、首都圏を中心に電力供給は慢性的に逼迫した。背景には東京電力福島第1原発の同型炉が東日本に集中し、安全審査の長期化や立地自治体の同意に難航した経緯がある。原発事故の影響は今も色濃く、「原発正常化」への道のりは遠い。
安全性に差異なし
日本の原発は、米国で開発された「軽水炉」と呼ばれる原子炉が採用されている。蒸気を発生させる仕組みの違いで、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類の炉型があり、開発メーカーもそれぞれ異なる。BWRは東電や東北電、中部電力などが採用し、PWRは関西電力や九州、四国、北海道電力などが採用している。
福島第1原発事故を受け、原子力規制委員会が定めた新規制基準では、福島第1と同じタイプのBWRについて、重大事故の際に放射性物質を吸着し拡散を防ぐ排気装置「フィルターベント」の整備が再稼働の条件となった。
このため、BWRを保有する電力各社は対応に追われた。規制委への安全審査の申請も遅れ、PWRの審査が先行する形となった。規制当局関係者は「2つの炉型に安全性の差異はないが、福島事故の影響もありBWRの審査が厳格化した感は否めない」と話す。
日本の特殊事情
国内にある33基の原発はBWRとPWRがほぼ半々だが、日本原子力産業協会の調べでは、世界で運転中の433基の原発のうち、BWRは約14%。PWRは約71%と最も多く、世界の主流になっている。
同協会担当者は「炉型の選別は各国の事情によるが、1970年代に標準化を実現したPWRは原子力先進国で採用された」と指摘。日本でBWRの割合が多い理由について「日本はプラントメーカーが3社存在する世界でもまれな国だが、各社が輸入した技術を段階的に国産化し、炉型の採用が決まった経緯も大きい」と分析する。
福島第1原発事故から13年余り。生成AI(人工知能)の普及に伴う電力需要の拡大で、世界の原子力政策は転換期に入った。脱炭素と電力の安定供給を実現する原発は、資源に乏しい日本のエネルギー戦略を考える上で欠かせない。
林芳正官房長官は29日の記者会見で「わが国全体の経済成長の観点から再稼働の重要性が高まっている」と言及した。その意味でも、BWR初の再稼働は大きな節目と言える。
今後は原発稼働の東西地域差が生まれる構造的な課題をどう解消するのかが焦点となる。国が前面に立って再稼働を後押しするのは当然だが、電力各社も原発への信頼回復に向けたさらなる取り組みが求められる。(白岩賢太)