一蘭は10月10日、国内83店舗目となる「銀座一蘭」(東京都中央区)をオープンする。同店では限定メニューの「天然とんこつラーメン(銀座重箱)」(1180円、税込)を提供する。一蘭は、店舗名を通常「太宰府参道店」「六本木店」など「地名+店」というスタイルにしているが、新店舗の名称は銀座一蘭。この背景には、店舗を訪れるワクワク感を提供する狙いがある。
同店は、外観や内装などを「レトロ調」に統一。銀座という大都心にありながら、一歩入れば都会の喧騒から離れた空間が提供される。同店は地下にあり、階段を下りていくと他店の写真が目に入ってくる。いずれも、オープン時に撮影されたものだ。担当者は「国内外問わず多くの店舗で、オープン時には行列ができている」と話す。また、店舗がイメージする「昭和30年代」の銀座や、一蘭の創業当時の写真が並び、これまで一蘭がたどってきた歴史を見ることができる。内装もレンガ調にし、店内の鏡にはエイジングを施してある。「空席案内板」も木目調にアレンジするなど、レトロな空間にこだわった。一蘭は現在展開している82店舗の全てが直営店。「世界中どこの店舗に行っても同じ体験を」と、味だけでなく店舗の作り込みにも余念がない。
提供されるラーメンは、有田焼の専属窯元で1つずつ作られた重箱で提供される。一蘭の別店舗では同じように重箱で提供されるラーメンが既にあるが、「中身は全く違う」(担当者)と自信を見せる。
特にこだわったのが、麺とチャーシューだ。麺には「大吟醸麺」を使用。大吟醸という称号は、日本酒の中でも特に米を磨いたものに冠される。大吟醸麺では、大吟醸の日本酒と同じように、他の店舗で提供される麺よりも小麦を磨き上げた。小麦は、磨いて中心に近づくほど、雑味を抑えられるのだという。また、材料には酒かすも使用。栄養価を高め、美容効果を付加する狙いがある。また、生麺の状態ではほのかに酒の香りがするという。
チャーシューには、専属の職人が厳選した豚バラ肉を使用。一般の店舗で提供されているものと比べると、やわらかさや脂身の甘みに特徴があるという。
日本酒も提供
新店舗の立地に銀座を選んだ理由について、担当者は土地のブランドを挙げた。「伝統と革新が共存している」とも話し、「職人が培ったノウハウなどの伝統的な部分と、革新的な技術が共存する一蘭と親和性が高い」としている。
担当者によれば、銀座はインバウンドのニーズも非常に高い。東京都発表の「平成30年東京都観光客数等実態調査」によると、2018年中に都内を訪れた外国人観光客はおよそ1400万人。また、同じく東京都が発表した訪都外国人の動向に関する「平成30年国・地域別外国人旅行者行動特性調査結果」によると、外国人観光客に最も人気のあるスポットは新宿・大久保(全体の55.4%が訪問)。2位の銀座は48.9%だ。外国人に人気とされるラーメンを、インバウンド需要の中心地で展開することで、成長を加速させたい考えだ。
外国人だけでなく、仕事帰りのサラリーマンも狙う。付近には「サラリーマンのメッカ」ともいえる新橋があり、銀座一蘭の商圏とも重なる。「ちょい飲み需要」を狙うが、同店では新たに日本酒の提供も始める。それは、大吟醸麺との相性が良いからだとか。かつては一部店舗で提供していたが、現在日本酒が飲める一蘭はないという。ちなみに、日本酒の価格や提供方法などは明かさなかった。
一蘭では、「なんば御堂筋店」と「西新宿店~発祥の店~」で「とんこつ不使用ラーメン」を提供。銀座一蘭で提供される銀座重箱と同じ1180円と、ラーメンにしてはやや高価なラインアップを展開し始めている。競合を見れば、一風堂も外資系高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」で「ザ・ペニンシュラ東京“マイラーメン”by 一風堂」を提供。こちらは3000円超えとやや毛色が違うが、じわじわと高級ラーメンの波が押し寄せてきているのかもしれない。