福岡県糸田町の社会福祉法人「貴寿会」の理事を選定する権限を与えることなどを約束した見返りに、金銭を受け取ったとして、県警は14日、社会福祉法違反(収賄)の疑いで、理事長の今宮一成容疑者(57)=同県香春町=を、同法違反(贈賄)の疑いで、団体役員藤井諭容疑者(61)=東京都品川区=ら3人も逮捕した。
同法の贈収賄の罰則規定による立件は全国2例目。他に逮捕されたのは団体役員田中勇容疑者(45)=横浜市緑区=と会社役員村社勝容疑者(74)=岡山市北区=。
県警は4人の認否を明らかにしていない。今宮容疑者は逮捕前の取材に、収賄容疑について「分からない」と話した。
捜査関係者によると、今宮容疑者との約束に基づき、藤井容疑者は田中容疑者を理事に指名。田中容疑者は経理など事務全般を担当していた。県警は10月、関係先を家宅捜索、組織的な不正があった可能性もあるとみて、資金管理の状況などを調べる。
今宮容疑者の逮捕容疑は2021年6~7月ごろ、同県田川市内の飲食店などで、法人の譲渡に伴い、理事を藤井容疑者が指定した人物に変更できるようにすることを了承し、2億円を受け取る約束をし、その後計9400万円を受け取った疑い。藤井容疑者ら3人の逮捕容疑は現金を渡した疑い。
県警によると、藤井容疑者は21年6月~23年3月、理事長に就いた。同年4月、今宮容疑者が再び理事長に戻った。
厚生労働省によると、贈収賄に関する罰則規定は16年に新設した。有罪判決に至った例は、甲府市の社会福祉法人「大寿会」の役員選任などを巡る贈収賄事件の1件。