兵庫県赤穂市の市民病院で2020年1月、手術中に適切な処置を怠り、患者に重度の障害を負わせたとして書類送検された40歳代の執刀医について、神戸地検姫路支部は近く業務上過失傷害罪で在宅起訴する方針を固めた。複数の関係者への取材でわかった。医師が医療行為で起訴されるのは極めて異例。
執刀医は20年1月、同病院で70歳代の女性患者の腰椎の手術時、患部を見やすくするための十分な止血などを怠り、ドリルで腰椎を削り取った際に誤って神経を損傷させたとして、今年7月、県警に書類送検された。女性患者は両足にまひが残る重度の後遺障害を負った。
捜査関係者によると、執刀医は県警の調べに容疑を否認していたという。
手術は録画されており、同支部は、複数の医師に映像の確認を依頼。結果、明らかに不適切な施術だとする意見が得られた。上級庁とも協議し、刑事責任を問えるだけの過失があると判断したとみられる。
一方、手術助手を務め、執刀医と共に書類送検された科長の医師については、同支部は起訴を見送る方針。
女性患者とその家族は、執刀医と市を相手取り、神戸地裁姫路支部に損害賠償請求訴訟を起こし、係争中。執刀医は訴訟の証人尋問で、神経を傷付けた原因を問われ、「私の手術がつたなかったと思っている」と述べ、謝罪した。一方で「手術をやってはいけないほどの技量ではない」とも述べた。
市民病院によると、執刀医が19年9月~20年2月に担当した手術では、女性患者を含め8件の医療事故が発生した。同病院は女性患者の手術について医療過誤と認定。執刀医は21年8月、市民病院を依願退職した。