“天空の廃虚”生まれ変わる 横須賀・田浦月見台住宅、店舗兼用住宅に転換へ

“天空の廃虚”と呼ばれる横須賀市田浦町の旧市営住宅「田浦月見台住宅」の再生に向けたプロジェクトが進んでいる。民官連携事業として新たなコミュニティーづくりを図るため、市は不動産会社「エンジョイワークス」(鎌倉市)と協定を締結し、築60年超の平屋の建物22棟をリノベーションして店舗兼用住宅として貸し出す。来年7月の「まちびらき」に向けて既に入居希望者は募集数を超えており、同社の福田和則社長は「古いものを大切にし、新たに創造的なものを見いだしてくれる方に入居してもらい地域を盛り上げてほしい」と期待している。
同住宅はJR田浦駅から徒歩10分ほどに位置し、長浦湾を望める標高約60メートルの小高い丘にある。住宅需要が増加した1960年に開設され、約1万3600平方メートルの敷地内に木造平屋とブロック造平屋の計32棟74戸があった。しかし、2020年に全入居者が退去し、市営住宅としては廃止。田浦月見台住宅は谷戸地域にあるため、急な坂や階段が多く、高齢化による人口減少も進んでおり、売却の見込みがない状態が続いていた。
活用法を探り民官連携事業として事業者公募を行い、23年12月に同社が選ばれた。市は土地と建物を無償で10年間貸与し、同社が資金を調達しリノベーションや運営などを担う。昭和の趣が残る平屋を維持したまま外壁補修や内装を解体し、22棟58戸の集落へと生まれ変わらせる計画だ。一部の棟は共用施設として、サウナ施設や地域住民の交流スペースなどを設けるという。