動物が鉄分ほしくてレールなめるから?千葉県内で列車と衝突多発…対策は辛い薬剤・高周波音・発光

千葉県内のJR路線で、列車と野生動物との衝突事故が相次いでいる。JR東日本千葉支社によると、2024年度の衝突事故件数は200件を超え、過去最多ペースとなっている。同支社は、線路脇に野生動物が嫌う音を出す装置を設置するなど対策に力を入れている。(大森遥都)

同支社管内の野生動物との衝突件数は年々増え続けている。統計を取り始めた2017年度は51件だったが、23年度には過去最多となる265件を記録した。24年度は25年1月23日時点で203件と、昨年度を上回る勢いとなっている。
路線別では、内房線が最も多い120件で全体の約6割を占めた。中でも、上総湊―浜金谷駅間(富津市)では77件もの衝突が発生している。外房線は59件で約3割と、房総半島での発生がほとんどだった。

衝突する動物はシカやキョン、イノシシなどが多い。担当者は「動物たちは鉄分を摂取するためにレールをなめようとして線路に侵入するのではないか」と分析する。
野生動物との衝突事故は、列車が遅れるだけでなく、車体の損傷にもつながる。乗客がけがをする恐れもあることから、同支社は動物を線路に近づかせないように対策に知恵を絞る。

切り札として期待されているのが「鹿ソニック」だ。シカなど野生動物が嫌がる高周波音を出す装置で、複数パターンの高周波音を周囲数十メートルに放つ。同支社では、衝突事故の多い富津市内の線路脇を中心に、計100台程度の「鹿ソニック」や「猪(いのしし)ソニック」を設置している。
また、シカは辛味を嫌うことから、唐辛子の成分「カプサイシン」を含む薬剤を散布したり、LEDを発光させて動物を威嚇する「クルナレーザー」を導入したりと、あの手この手で対策を進めている。
同支社では、内房線沿線の富津市や県などと連携し、個体数の管理を含む抜本的な対策の実施も検討する。担当者は「衝突事故を減らし、公共交通機関を安心してご利用いただけるよう努めていきたい」と話している。