急増のクマ対策に「壊せないゴミ集積所」、栃木県が導入へ…頑丈さで「諦める経験」学習させる

全国的にクマの出没や人身被害が相次ぐなか、栃木県は今春、クマ対策の本場・北海道生まれの鋼材製ゴミステーションの試験導入に乗り出す。県内では今年度、クマの目撃件数が過去最多を更新した。新しい取り組みによって、クマを人の生活圏に寄せ付けないための環境整備を進めたい考えだ。(奥山大輝)
導入するのは、北海道網走市の廃棄物処理業「シティ環境」がヒグマ対策用に製造するゴミステーション「とれんベア」。2ミリ厚の鋼材製で、幅165センチ、奥行き90センチ、高さ130センチ。コンクリートの平板を基礎にしており、総重量は約1・1トンに達する。ヒグマの怪力でたたいても壊れず、押しても簡単には倒れない。扉の開閉はロック式で、ヒグマには開けられない。旭山動物園(北海道旭川市)の協力を得て、耐久性試験を実施しており、強度は実証済み。ヒグマより小さいツキノワグマが破壊するのは不可能だ。
市街地に出没するヒグマはエサを探してゴミ捨て場をあさるケースがある。
同社によると、とれんベアの頑丈さは、ヒグマに諦める経験を学習させるためのものだ。ヒグマはエサにありつくことができた場所を覚えて、その場に執着する特性がある。逆に、エサのにおいがしても食べることを阻まれれば、そこではエサが得られないことを学習するという。
同社は、この習性に着目。ヒグマを寄せ付けないゴミ捨て環境をつくろうと、2013年にとれんベアを開発した。これまでに、ヒグマが多く出没する北海道斜里町ウトロ地区で12台が導入されている。
一方、本県ではツキノワグマの目撃件数が急増している。県自然環境課によると、昨年4~12月の目撃件数は250件で、23年度の1年間に確認された142件の約1・8倍に上った。記録を確認できる14年度以降では最多の件数だ。
これに伴って、県内各地で人が襲われてケガをするなどの事例も起きており、国内有数の観光地である日光市の中禅寺湖畔では昨年8月、ツキノワグマが店舗に侵入し、店内を荒らすケースもあった。
クマによる被害は近年、全国的にも相次いでおり、環境省は昨年4月、ヒグマとツキノワグマの「クマ類」を「指定管理鳥獣」に追加し、各都道府県に計画的な捕獲と頭数管理を呼びかけている。これを受けて県も新年度から捕獲上限数をこれまでの90頭から145頭に拡大するなど、対策を強化する。
本州初となるとれんベアの導入も対策強化の一環だ。県によると、環境NPOの主導で長野県軽井沢町などでもツキノワグマ対策のゴミステーションが設置されている。ただ、栃木県側が照会したところ、現在は製造を中止していることが判明。「大は小を兼ねる」との考えでとれんベアを選んだという。2、3月中をめどに、県内3市町で各1台を設置し、約1年かけて効果や使い勝手を検証。今後の導入拡大の可能性を探る方針だ。